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〘500㌻〙

第1章

1 エフライムの山地やまちのラマタイムゾビムにエルカナと名なづくる人ひとありエフライム人びとにしてエロハムの子こなりエロハムはエリウの子こエリウはトフの子こトフはツフの子こなり 2 エルカナに二人ふたりの妻つまありてひとりの名なをハンナといひひとりの名なをペニンナといふペニンナには子こありたれどもハンナには子こあらざりき 3 是この人ひと每歳としごとに其その邑まちをいで上のぼりてシロにおいて萬軍ばんぐんのヱホバを拜をがみ之これに祭物そなへものをささぐ其處そこにエリの二人ふたりの子こホフニとピネハスをりてヱホバに祭司さいしたり 4 エルカナ祭物そなへものをささぐる時とき其その妻つまペニンナと其そのすべての息子むすこ女子むすめにわかちあたへしが 5 ハンナには其その倍ばいをあたふ是こはハンナを愛あいするが故ゆゑなりされどヱホバ其その孕はらみをとどめたまふ 6 其その敵あだもまた痛いたくこれをなやましてヱホバが其そのはらみをとどめしを怒いからせんとす 7 歳々とし〴〵ハンナ、ヱホバの家いへにのぼるごとにエルカナかくなせしかばペニンナかくのごとく之これをなやます是故このゆえにハンナないてものくはざりき 8 其その夫をつとエルカナ之これにいひけるはハンナよ何故なにゆゑになくや何故なにゆゑにものくはざるや何故なにゆゑに心こゝろかなしむや我われは汝なんぢのためには十人にんの子こよりもまさるにあらずや

9 かくてシロにて食󠄃くひ飮のみせしのちハンナたちあがれり時ときに祭司さいしエリ、ヱホバの宮みやの柱󠄃はしらの傍かたはらにある壇だんに坐ざす 10 ハンナ心こゝろにくるしみヱホバにいのりて甚いたく哭なき 11 誓ちかひをなしていひけるは萬軍ばんぐんのヱホバよ若もし誠󠄃まことに婢しもめの惱なやみをかへりみ我われを憶おもひ婢しもめを忘󠄃わすれずして婢しもめに男子をとこのこをあたへたまはば我われこれを一生しやうのあひだヱホバにささげ剃髮刀かみそりを其その首かうべにあつまじ
 500㌻ 

12 ハンナ、ヱホバのまへに長ながくいのりければエリ其その口くちに目めをとめたり 13 ハンナ心こゝろの中うちにものいへば只たゞ唇くちびるうごくのみにて聲こゑきこえず是故このゆえにエリこれを醉ゑひたる者ものと思おもひ 14 之これにいひけるは何時いつまで醉ゑひをるか爾なんぢの酒さけをされよ 15 ハンナこたへていひけるは主しゆよ然しかるにあらず我われは氣きのわづらふ婦󠄃人をんなにして葡萄ぶだう酒しゆをも濃こき酒さけをものまず惟たゞわが心こゝろをヱホバのまへに明あかせるなり 16 婢しもめを邪󠄅よこしまなる女をんなとなすなかれ我われはわが憂うれひと悲かなしみの多おほきよりして今いままでかたれり 17 エリ答こたへていひけるは安やすんじて去され願ねがはくはイスラエルの神かみ汝なんぢの求もとむる願ねがひを許ゆるしたまはんことを 18 ハンナいひけるはねがはくは仕女つかへめの汝なんぢのまへに恩めぐみをえんことをと斯かくてこの婦󠄃をんなさりて食󠄃ものくひ其その顏かほふたゝび哀かなしげならざりき〘383㌻〙

19 是こゝに於おいて彼等かれら朝󠄃あさはやくおきてヱホバの前󠄃まへに拜をがみをしかへりてラマの家いへにいたる而しかしてエルカナ其そのつまハンナとまじはるヱホバ之これをかへりみたまふ 20 ハンナ孕はらみてのち月󠄃つきみちて男子をのこをうみ我われこれをヱホバに求もとめし故ゆゑなりとて其その名なをサムエル(ヱホバに聽きかる)となづく

21 爰こゝに其人そのひとエルカナ及および其その家族かぞくみな上のぼりて年々とし〴〵の祭物そなへもの及および其その誓ちかひし物ものをささぐ 22 然しかれどもハンナは上のぼらず其その夫をつとにいひけるは我われはこの子この乳󠄃ちばなれするに及およびてのち之これをたづさへゆきヱホバのまへにあらはれしめ恒つねにかしこに居をらしめん 23 其その夫をつとエルカナ之これにいひけるは汝なんぢの善よしと思おもふところを爲なし此この子こを乳󠄃ちばなすまでとゞまるべし只たゞヱホバの其その言ことばを確實たしかならしめ賜たまはんことをねがふと斯かくこの婦󠄃をんな止とゞまりて其その子こに乳󠄃ちゝをのませ其そのちばなれするをまちしが 24 乳󠄃ちばなせしとき牛うし三頭みつ粉󠄃こな一斗いつと酒さけ一嚢ひとふくろを取とり其その子こをたづさへてシロにあるヱホバの家いへにいたる其その子こなほ幼稚いとけなし 25 是こゝに於おいて牛うしをころしその子こをエリの許もとに携たづさへゆきぬ 26 ハンナいひけるは主しゆよ汝なんぢのたましひは活いくわれはかつてここにてなんぢの傍かたはらにたちヱホバにいのりし婦󠄃をんななり
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27 われ此この子このためにいのりしにヱホバわが求もとめしものをあたへたまへり 28 此故このゆゑにわれまたこれをヱホバにささげん其その一生いつしやうのあひだ之これをヱホバにささぐ斯かくてかしこにてヱホバををがめり

第2章

1 ハンナ禱いのりて言いひけるは我わが心こゝろはヱホバによりて喜よろこび我わが角つのはヱホバによりて高たかし我わが口くちはわが敵てきの上うへにはりひらく是こは我われ汝なんぢの救拯すくひによりて樂たのしむが故ゆゑなり 2 ヱホバのごとく聖󠄃きよき者ものはあらず其そは汝なんぢの外ほかに有󠄃ある者ものなければなり又󠄂またわれらの神かみのごとき磐いははあることなし 3 汝等なんぢら重かさねて甚いたく誇たかぶりて語かたるなかれ汝等なんぢらの口くちより漫ほこり言ごとを出いだすなかれヱホバは全󠄃知ぜんちの神かみにして行爲わざを裁度はかりたまふなり 4 勇󠄃者ますらをの弓ゆみは折をれ倒たふるる者ものは勢力ちからを帶おぶ 5 飽󠄄あき足たれる者ものは食󠄃しよくのために身みを傭やとはせ饑󠄃うゑたる者ものは憩いこへり石女うまずめは七人にんを生うみ多おほくの子こを有󠄃もてる者ものは衰󠄄おとろふるにいたる 6 ヱホバは殺ころし又󠄂また生いかしたまひ陰府よみに下くだし又󠄂また上のぼらしめたまふ 7 ヱホバは貧󠄃まづしからしめ又󠄂また富とましめたまひ卑ひくくしまた高たかくしたまふ 8 荏弱󠄃よわき者ものを塵ちりの中うちより擧あげ窮󠄃乏とぼしき者ものを埃あくたの中うちより升のぼせて王公󠄃きみたちの中うちに坐ざせしめ榮光さかえの位くらゐをつがしめ給たまふ地ちの柱󠄃はしらはヱホバの所󠄃屬ものなりヱホバ其その上うへに世界せかいを置おきたまへり 9 ヱホバ其その聖󠄃徒せいとの足あしを守まもりたまはん惡あしき者ものは黑暗󠄃くらやみにありて默もだすべし其そは人ひと力ちからをもて勝󠄃かつべからざればなり〘384㌻〙 10 ヱホバと爭あらそふ者ものは破碎くだかれんヱホバ天てんより雷いかづちを彼等かれらの上うへにくだしヱホバは地ちの極はてを審さばき其その王わうに力ちからを與あたへ其その膏あぶらそそぎし者ものの角つのを高たかくし給たまはん

11 エルカナ、ラマに往󠄃ゆきて其その家いへにいたりしが稚子をさなごは祭司さいしエリのまへにありてヱホバにつかふ

12 さてエリの子こは邪󠄅よこしまなる者ものにしてヱホバをしらざりき 13 祭司さいしの民たみに於おける習󠄃慣ならはしは斯かくのごとし人ひと祭物そなへものをささぐる時とき肉󠄁にくを烹にるあひだに祭司さいしの僕しもべ三みつの齒はある肉󠄁叉にくさしを手てにとりて來きたり
 502㌻ 
14 之これを釜󠄃かまあるひは鍋なべあるひは鼎かなへ又󠄂または炮烙はうらくに突つきいれ肉󠄁叉にくさしの引ひきあぐるところの肉󠄁にくは祭司さいしみなこれを己おのれにとる是かくシロに於おいて凡すべてそこに來きたるイスラエル人びとになせり 15 脂あぶらをやく前󠄃まへにも亦また祭司さいしのしもべ來きたり祭物そなへものをささぐる人ひとにいふ祭司さいしのために燒やくべき肉󠄁にくをあたへよ祭司さいしは汝なんぢより烹にたる肉󠄁にくを受うけず生腥なまの肉󠄁にくをこのむと 16 もし其人そのひとこれにむかひ直たゞちに脂あぶらをやくべければ後のち心こゝろのこのむままに取とれといはば僕しもべ之これにいふ否いな今いまあたへよ然しからずば我われ强しひて取とらんと 17 故ゆゑに其その壯わかき者ものの罪つみヱホバのまへに甚はなはだ大おほいなりそは人々ひと〴〵ヱホバに祭物そなへものをささぐることをいとひたればなり

18 サムエルなほ幼をさなくして布ぬののエポデを著きてヱホバのまへにつかふ 19 また其その母はゝこれがために小ちひさき明衣うはぎをつくり歳とし每ごとにその夫をつととともに年としの祭物そなへものをささげにのぼる時ときこれをもちきたる 20 エリ、エルカナとその妻つまを祝しゆくしていひけるは汝なんぢがヱホバにささげたる者もののためにヱホバ此これ婦󠄃をんなよりして子たねを汝なんぢにあたへたまはんことをねがふと斯かくてかれら其その郷さとにかへる 21 しかしてヱホバ、ハンナをかへりみたまひければハンナ孕はらみて三人にんの男子をとこのこと二人ふたりの女子をんなのこをうめり童子わらべサムエルはヱホバのまへにありて生育そだてり

22 ここにエリ甚はなはだ老おいて其その子こ等らがイスラエルの人々ひと〴〵になせし諸もろ〳〵の事ことを聞ききまた其その集會しふくわいの幕屋まくやの門もんにいづる婦󠄃人をんなたちと寢いねたるを聞きゝて 23 これにいひけるは何なんぞ斯かゝる事ことをなすや我われこのすべての民たみより汝なんぢらのあしき行おこなひをきく 24 わが子こよ然しかすべからず我わがきくところの風聞ふうぶんよからず爾なんぢらヱホバの民たみをしてあやまたしむ 25 人ひともし人ひとにむかひて罪つみををかさば神かみ之これをさばかんされど人ひともしヱホバに向むかひて罪つみををかさば誰たれかこれがためにとりなしをなさんやとしかれども其その子こ父󠄃ちゝのことばを聽きかざりきそはヱホバかれらを殺ころさんと思おもひたまへばなり 26 童子わらべサムエル生長そだちゆきてヱホバと人ひととに愛あいせらる
 503㌻ 

27 茲こゝに神かみの人ひとエリの許もとに來きたりこれにいひけるはヱホバ斯かくいひたまふ爾なんぢの父󠄃祖ちゝの家いへエジプトにおいてパロの家いへにありしとき我われ明あきらかに之これにあらはれしにあらずや〘385㌻〙 28 我われこれをイスラエルの諸もろ〳〵の支󠄂派󠄄わかれのうちより選󠄄えらみてわが祭司さいしとなしわが壇だんの上うへに祭物そなへものをささげ香かうをたかしめ我わが前󠄃まへにエポデを衣きしめまたイスラエルの人ひとの火くわ祭さいを悉こと〴〵く汝なんぢの父󠄃ちゝの家いへにあたへたり 29 なんぞわが命めいぜし犧牲いけにへと禮物そなへものを汝なんぢの家いへにてふみつくるや何なんぞ我われよりもなんぢの子こをたふとみわが民たみイスラエルの諸もろ〳〵の祭物そなへものの最もつとも嘉よきところをもて己おのれを肥こやすや 30 是このゆゑにイスラエルの神かみヱホバいひたまはく我われ誠󠄃まことに曾かつていへり汝なんぢの家いへおよびなんぢの父󠄃祖ちゝの家いへ永ながくわがまへにあゆまんと然しかれども今いまヱホバいひたまふ決きはめてしからず我われをたふとむ者ものは我われもこれをたふとむ我われを賤いやしむる者ものはかろんぜらるべし 31 視みよ時ときいたらん我われ汝なんぢの腕うでと汝なんぢの父󠄃祖ちゝの家いへの腕うでを絕たち汝なんぢの家いへに老おいたるもの无なからしめん 32 我われ大おほいにイスラエルを善よくすべけれど汝なんぢの家內うちには災わざはひ見みえん汝なんぢの家いへにはこののち永ながく老おゆるものなかるべし 33 またわが壇だんより絕たゝざる汝なんぢの族やからの者ものは汝なんぢの目めをそこなひ汝なんぢの心こゝろをいたましめん又󠄂また汝なんぢの家いへにうまれいづるものは壯年さかりにして死しなん 34 汝なんぢのふたりの子こホフニとピネスの遇󠄃あふところの事ことを其その徴しるしとせよ即すなはち二人ふたりともに同おなじ日ひに死しなん 35 我われはわがために忠信ちうしんなる祭司さいしをおこさん其人そのひとわが心こゝろとわが意いにしたがひておこなはんわれその家いへをかたうせんかれわが膏あぶらそそぎし者もののまへに恒つねにあゆむべし 36 しかして汝なんぢの家いへにのこれる者ものは皆みなきたりてこれに屈かがみ一いち厘りんの金かねと一片ひときれのパンを乞こひ且かついはんねがはくは我われを祭司さいしの職つとめの一ひとつに任にんじて些少すこしのパンにても食󠄃くらふことをえせしめよと
 504㌻ 

第3章

1 童子わらべサムエル、エリのまへにありてヱホバにつかふ當時そのころはヱホバの言ことばまれにして默示しめしあること恒つねならざりき 2 偖さてエリ目め漸やうやくくもりて見みることをえず此時このとき其その室しつに寢いねたり 3 神かみの燈ともしびなほきえずサムエル神かみの櫃はこあるヱホバの宮みやに寢いね 4 時ときにヱホバ、サムエルをよびたまふ彼かれ我われ此こゝにありといひて 5 エリの許もとに趨はせゆきいひけるは汝なんぢわれをよぶ我われここにありエリいひけるは我われよばず反かへりて臥いねよと乃すなはちゆきていぬ 6 ヱホバまたかさねてサムエルよとよびたまへばサムエルおきてエリのもとにいたりいひけるは汝なんぢわれをよぶ我われここにありエリこたへけるは我われよばずわが子こよ反かへりていねよ 7 サムエルいまだヱホバをしらずまたヱホバのことばいまだかれにあらはれず 8 ヱホバ、三みたびめに又󠄂またサムエルをよびたまへばサムエルおきてエリの許もとにいたりいひけるは汝なんぢわれをよぶ我われここにありとエリ乃すなはちヱホバの童子わらべをよびたまひしをさとる〘386㌻〙 9 故ゆゑにエリ、サムエルにいひけるはゆきて寢いねよ彼かれ若もし汝なんぢをよばば僕しもべ聽きくヱホバ語かたりたまへといへとサムエルゆきて其その室しつにいねしに

10 ヱホバ來きたりて立たちまへの如ごとくサムエル、サムエルとよびたまへばサムエル僕しもべきく語かたりたまへといふ 11 ヱホバ、サムエルにいひ賜たまひけるは視みよ我われイスラエルのうちに一ひとつの事ことをなさんこれをきくものは皆みな其その耳みゝふたつながら鳴ならん 12 其その日ひにはわれ甞かつてエリの家いへについて言いひしことを始はじめより終󠄃をはりまでことごとくエリになすべし 13 われかつてエリに其その惡事あくじのために永ながくその家いへをさばかんとしめせりそは其その子この詛のろふべきことをなすをしりて之これをとどめざればなり 14 是故このゆえに我われエリのいへに誓ちかひてエリの家いへの惡あくは犧牲いけにへあるひは禮物そなへものをもて永ながくあがなふ能あたはずといへり

15 サムエル朝󠄃あさまでいねてヱホバの家いへの戶とを開ひらきしが其その異象まぼろしをエリにしめすことをおそる 16 エリ、サムエルをよびていひけるはわが子こサムエルよ答こたへけるはわれここにあり 17 エリいひけるは何事なにごとを汝なんぢにつげたまひしや請󠄃こふ我われにかくすなかれ汝なんぢもし其その汝なんぢに吿つげたまひしところを一ひとつにてもかくすときは神かみ汝なんぢにかくなし又󠄂またかさねてかくなしたまヘ
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18 サムエル其その事ことをことごとくしめして彼かれに隱かくすことなかりきエリいひけるは是こはヱホバなり其そのよしと見みたまふことをなしたまへと

19 サムエルそだちぬヱホバこれとともにいましてそのことばをして一ひとつも地ちにおちざらしめたまふ 20 ダンよりベエルシバにいたるまでイスラエルの人ひとみなサムエルがヱホバの預言者よげんしやとさだまれるをしれり 21 ヱホバふたゝびシロにてあらはれたまふヱホバ、シロにおいてヱホバの言ことばによりてサムエルにおのれをしめしたまふなりサムエルの言ことばあまねくイスラエル人びとにおよぶ

第4章

1 イスラエル人びとペリシテ人びとにいであひて戰たゝかはんとしエベネゼルの邊󠄎ほとりに陣ぢんをとりペリシテ人びとはアベクに陣ぢんをとる 2 ペリシテ人びとイスラエル人びとにむかひて陣列そなへをなせり戰たゝかふにおよびてイスラエル人びとペリシテ人びとのまへにやぶるペリシテ人びと戰いくさ場ばにおいて其その軍ぐん四千せん人にんばかりを殺ころせり 3 民たみ陣ぢん營えいにいたるにイスラエルの長老としより曰いひけるはヱホバ何故なにゆゑに今日けふ我等われらをペリシテ人びとのまへにやぶりたまひしやヱホバの契󠄅約けいやくの櫃はこをシロより此こゝにたづさへ來きたらん其その櫃はこわれらのうちに來きたらば我われらを敵てきの手てよりすくひいだすことあらんと〘387㌻〙 4 かくて民たみ人ひとをシロにつかはしてケルビムの上うへに坐ざしたまふ萬軍ばんぐんのヱホバの契󠄅約けいやくの櫃はこを其處そこよりたづさへきたらしむ時ときにエリの二人ふたりの子こホフニとピネハス神かみの契󠄅約けいやくのはことともに彼處かしこにありき

5 ヱホバの契󠄅約けいやくの櫃はこ陣ぢん營えいにいたりしときイスラエル人びと皆みな大おほいによばはりさけびければ地ちなりひびけり 6 ペリシテ人びと喊呼さけびの聲こゑを聞きゝていひけるはヘブル人びとの陣ぢん營えいに起󠄃おこれる此この大おほいなるさけびの聲こゑは何なんぞやと遂󠄅つひにヱホバの櫃はこの其その陣ぢん營えいにいたれるを知しる
 506㌻ 
7 ペリシテ人びとおそれていひけるは神かみ陣ぢん營えいにいたる又󠄂またいひけるは鳴呼あゝわれら禍わざはひなるかな今いまにいたるまで斯かゝることなかりき 8 ああ我等われら禍わざはひなるかな誰たれかわれらを是これらの强つよき神かみの手てよりすくひいださんや此これ等らの神かみは昔むかし諸もろ〳〵の災わざはひを以もてエジプト人びとを曠野あらのに擊うちし者ものなり 9 ペリシテ人びとよ强つよくなり毫傑をとこのごとく爲なせヘブル人びとがかつて汝なんぢらに事つかへしごとく汝なんぢらこれに事つかふるなかれ豪傑をとこのごとく爲なして戰たゝかへよ 10 かくてペリシテ人びと戰たゝかひしかばイスラエル人びとやぶれて各々おの〳〵其その天てん幕まくに逃󠄄にげかへる戰死うちじにはなはだ多おほくイスラエルの步ほ兵へいの仆たふれし者もの三萬人まんにんなりき 11 又󠄂また神かみの櫃はこは奪うばはれエリの二人ふたりの子こホフニとピネハス殺ころさる

12 是この日ひベニヤミンの一人ひとり軍ぐん中ちうより走はせ來きたり其その衣ころもを裂さき土つちをかむりてシロにいたる 13 其そのいたれる時ときエリ道󠄃みちの傍かたはらに壇だんに坐ざして觀望󠄇うかがひ居ゐたり其心そのこころに神かみの櫃はこのことを思おもひ煩わづらひたればなり其人そのひといたり邑まちにて人々ひと〴〵に吿つげければ邑まちこぞりてさけびたり 14 エリ此この呼號さけびの聲こゑをききていひけるは是この喧嘩さわぎの聲こゑは何なになるやと其人そのひといそぎきたりてエリにつぐ 15 時ときにエリ九十八歳さいにして其その目めかたまりて見みることあたはず 16 其人そのひとエリにいひけるは我われは軍ぐん中ちうより來きたれるもの我われ今日けふ軍ぐん中ちうより逃󠄄のがれたりエリいひけるは吾わが子こよ事こといかん 17 使󠄃人つかひ答こたへていひけるはイスラエル人びとペリシテ人びとの前󠄃まへに逃󠄄にげ且かつ民たみの中うちに大おほいなる戰死うちじにありまた汝なんぢの二人ふたりの子こホフニとピネハスは殺ころされ神かみの櫃はこは奪うばはれたり 18 神かみの櫃はこのことを演のべしときエリ其その壇だんより仰あふむけに門もんの傍かたはらにおち頸くびをれて死しねり是これはかれ老おいて身み重おもかりければなり其そのイスラエルを鞫さばきしは四十年ねんなりき

19 エリの媳よめピネハスの妻つま孕はらみて子こ產うまん時ときちかかりしが神かみの櫃はこの奪うばはれしと舅しうとと夫をつとの死しにしとの傳言うはさを聞きゝしかば其その痛いたみおこりきたり身みをかがめて子こを產うめり 20 其その死しなんとする時とき傍かたはらにたてる婦󠄃人をんなこれにいひけるは懼おそるるなかれ汝なんぢ男子をのこを生うめりと然しかれども答こたへず又󠄂またかへりみず
 507㌻ 
21 只たゞ榮光さかえイスラエルをさりぬといひて其その子こをイカボデ(榮さかえなし)と名なづく是これは神かみの櫃はこ奪うばはれしによりまた舅しうとと夫をつとの故ゆゑに因よるなり〘388㌻〙 22 またいひけるは榮光さかえイスラエルをさりぬ神かみの櫃はこうばはれたればなり

第5章

1 ペリシテ人びと神かみの櫃はこをとりて之これをエベネゼルよりアシドドにもちきたる 2 即すなはちペリシテ人びと神かみの櫃はこをとりて之これをダゴンの家いへにもちきたりダゴンの傍かたはらに置おきぬ 3 アシドド人びと次󠄄つぎの日ひ夙はやく興おきヱホバの櫃はこのまへにダゴンの俯伏うつむきに地ちにたふれをるをみ乃すなはちダゴンをとりて再ふたゝびこれを本もとの處ところにおく 4 また翌󠄃朝󠄃つぐあさ夙はやく興おきヱホバの櫃はこのまへにダゴン俯伏うつむきに地ちにたふれをるを見みるダゴンの頭かうべと其その兩ふたつの手て門閾しきゐのうへに斷たち切きれをり只たゞダゴンの體からだのみのこれり 5 是これをもてダゴンの祭司さいしおよびダゴンの家いへにいるもの今日けふにいたるまでアシドドにあるダゴンの閾しきゐをふまず

6 かくてヱホバの手ておもくアシドド人びとにくははりヱホバこれをほろぼし腫物はれものをもてアシドドおよび其その四周󠄃まはりの人ひとをくるしめたまふ 7 アシドド人びとその斯かゝるを見みていひけるはイスラエルの神かみの櫃はこを我われらのうちにとどむべからず其そは其その手ていたくわれらおよび我われらの神かみダゴンにくははればなり 8 是故このゆえに人ひとをつかはしてペリシテ人びとの諸君主きみたちを集あつめていひけるはイスラエルの神かみの櫃はこをいかにすべきや彼かれらいひけるはイスラエルの神かみのはこはガテに移うつさんと遂󠄅つひにイスラエルの神かみのはこをうつす 9 之これをうつせるのち神かみの手て其その邑まちにくははりて滅亡ほろぶるもの甚はなはだおほし即すなはち老おいたると幼いとけなきとをいはず邑まちの人ひとをうちたまひて腫物はれもの人々ひと〴〵におこれり 10 是こゝにおいて神かみのはこをエクロンにおくりたるに神かみの櫃はこエクロンにいたりしときエクロン人びとさけびていひけるは我等われらとわが民たみをころさんとてイスラエルの神かみのはこを我等われらにうつすと
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11 かくて人ひとを遣󠄃つかはしてペリシテ人びとの諸君主きみたちをあつめていひけるはイスラエルの神かみの櫃はこをおくりて本もとのところにかへさん然しからば我等われらとわが民たみをころすことなからん蓋そは邑まち中ぢうに恐おそろしき滅亡ほろびおこり神かみの手て甚はなはだおもく其處そこにくははればなり 12 死しなざる者ものは腫物はれものにくるしめられ邑まちの號呼さけび天てんに達󠄃たつせり

第6章

1 ヱホバの櫃はこ七なゝ月󠄃つきのあひだペリシテ人びとの國くににあり 2 ペリシテ人びと祭司さいしと卜筮師うらなひしをよびていひけるは我われらヱホバの櫃はこをいかがせんや如何いかにして之これをもとの所󠄃ところにかへすべきか我われらにつげよ 3 答こたへけるはイスラエルの神かみの櫃はこをかへすときはこれを空󠄃むなしくかへすなかれ必かならず彼かれに過󠄃とがの祭そなへものをなすべし然しかなさば汝なんぢら愈󠄃いゆることをえ且かつ彼かれの手ての汝なんぢらをはなれざる故ゆゑを知しるにいたらん〘389㌻〙 4 人々ひと〴〵いひけるは如何いかなる過󠄃とがの祭そなへものを彼かれになすべきや答こたへけるはペリシテ人びとの諸君主きみたちの數󠄄かずにしたがひて五いつつの金きんの腫物はれものと五いつつの金きんの鼠ねづみをつくれ是こは汝なんぢら皆みなと汝なんぢらの諸伯きみたちにおよべる災わざはひは一ひとつなるによる 5 汝なんぢらの腫物はれものの像󠄃かたちおよび地ちをあらす鼠ねづみの像󠄃かたちをつくりイスラエルの神かみに榮光さかえを皈きすべし庶幾こひねがはくはその手てを汝等なんぢらおよびなんぢらの神かみと汝等なんぢらの地ちにくはふることを輕かろくせん 6 汝なんぢらなんぞエジプト人びととパロの其心そのこころを頑󠄂かたくなにせしごとくおのれの心こゝろをかたくなにするや神かみかれらの中うちに數󠄄あまた度たび其その力ちからをしめせしのち彼かれら民たみをゆかしめ民たみつひにさりしにあらずや 7 されば今いまあたらしき車くるま一輛ひとつをつくり乳󠄃ちゝ牛うしのいまだ軛くびきをつけざるもの二頭ふたつをとり其その牛うしを車くるまに繋つなぎ其その犢こをはなして家いへにつれゆき 8 ヱホバの櫃はこをとりて之これを其その車くるまに載のせ汝なんぢらが過󠄃とがの祭そなへものとして彼かれになす金きんの製作物つくりものを檟ひつにをさめて其その傍かたはらにおき之これをおくりて去さらしめ 9 しかして見みよ若もし其その境さかひのみちよりベテシメシにのぼらばこの大おほいなる災わざはひを我われらになせるものは彼かれなり若もししかせずば我等われらをうちしは彼かれの手てにあらずしてそのことの偶然ぐうぜんなりしをしるべし
 509㌻ 

10 人々ひと〴〵つひに斯かくなし二ふたつの乳󠄃ちゝ牛うしをとりて之これを車くるまにつなぎその犢こを室いへにとぢこめ 11 ヱホバの櫃はこおよび金きんの鼠ねづみと其その腫物はれものの像󠄃かたちををさめたる檟ひつを車くるまに載のす 12 牝牛うし直すぐにあゆみてベテシメシの路みちをゆき鳴なきつつ大路おほぢをすすみゆきて右左みぎひだりにまがらずペリシテ人びとの君主きみたちベテシメシの境さかひまで其そのうしろにしたがひゆけり 13 時ときにベテシメシ人びと谷たにに麥むぎを刈かり居ゐたりしが目めをあげて其その櫃はこをみ之これを見みるをよろこべり 14 車くるまベテシメシ人びとヨシユアの田はたにいりて其處そこにとゞまる此こゝに大おほいなる石いしあり人々ひと〴〵車くるまの木きを劈わり其その牝牛うしを燔祭はんさいとしてヱホバにささげたり 15 レビの人ひとヱホバの櫃はことこれとともなる檟ひつの金きんの製作物つくりものををさめたる者ものをとりおろし之これを其その大おほ石いしのうへにおくしかしてベテシメシ人びと此この日ひヱホバに燔祭はんさいをそなへ犧牲いけにへをささげたり 16 ペリシテ人びとの五人にんの君主きみたちこれを見みて同おなじ日ひにエクロンにかへれり

17 さてペリシテ人びとが過󠄃とがの祭そなへものとしてヱホバにたせし金きんの腫物はれものはこれなり即すなはちアシドドのために一ひとつガザのために一ひとつアシケロンのために一ひとつガテのために一ひとつエクロンのために一ひとつなりき 18 また金きんの鼠ねづみは城󠄃邑しろと郷里むらざとをいはず凡すべて五人にんの君主きみに屬ぞくするペリシテ人びとの邑まちの數󠄄かずにしたがひて造󠄃つくれりヱホバの櫃はこをおろせし大おほ石いし今日こんにちにいたるまでベテシメシ人びとヨシユアの田はたけにあり〘390㌻〙

19 ベテシメシの人々ひと〴〵ヱホバの櫃はこをうかがひしによりヱホバこれをうちたまふ即すなはち民たみの中うち七十人にんをうてりヱホバ民たみをうちて大おほいにこれをころしたまひしかば民たみなきさけべり 20 ベテシメシ人びといひけるは誰たれかこの聖󠄃きよき神かみたるヱホバのまへに立たつことをえんヱホバ我われらをはなれて何人たれのところにのぼりゆきたまふべきや 21 かくて使󠄃者つかひをキリアテヤリムの人ひとに遣󠄃つかはしていひけるはペリシテ人びとヱホバの櫃はこをかへしたれば汝なんぢらくだりて之これを汝なんぢらの所󠄃ところに携たづさへのぼるべし
 510㌻ 

第7章

1 キリアテヤリムの人ひと來きたりヱホバのはこを携たづさへのぼりこれを山やまのうへなるアビナダブの家いへにもちきたり其その子こエレアザルを聖󠄃きよめてヱホバの櫃はこをまもらしむ 2 其その櫃はこキリアテヤリムにとゞまること久ひさしくして二十年ねんをへたりイスラエルの全󠄃家ぜんかヱホバをしたひて歎なげけり

3 時ときにサムエル、イスラエルの全󠄃家ぜんかに吿つげていひけるは汝なんぢらもし一心いつしんを以もてヱホバにかへり異ことなる神かみとアシタロテを汝なんぢらの中うちより棄すて汝なんぢらの心こゝろをヱホバに定さだめ之これにのみ事つかへなばヱホバ汝なんぢらをペリシテ人びとの手より救すくひださん 4 ここにおいてイスラエルの人々ひと〴〵バアルとアシタロテをすててヱホバにのみ事つかふ

5 サムエルいひけるはイスラエル人びとをことごとくミズパにあつめよ我われ汝なんぢらのためにヱホバにいのらん 6 かれらミズパに集あつまり水みづを汲󠄂くみて之これをヱホバのまへに注そゝぎ其その日ひ斷食󠄃だんじきして彼處かしこにいひけるは我等われらヱホバに罪つみををかしたりとサムエル、ミズパに於おいてイスラエルの人ひとを鞫さばく 7 ペリシテ人びとイスラエルの人々ひと〴〵のミズパに集あつまれるを聞きゝしかばペリシテ人びとの諸君主きみたちイスラエルにせめのぼれりイスラエル人びとこれを聞きゝてペリシテ人びとをおそれたり 8 イスラエルの人々ひと〴〵サムエルに云いひけるは我われらのために我われらの神かみヱホバに祈いのることをやむるなかれ然しからばヱホバ我われらをペリシテ人びとの手てよりすくひいださん 9 サムエル哺乳󠄃ちちのむ羊こひつじをとり燔祭はんさいとなしてこれをまつたくヱホバにささぐまたサムエル、イスラエルのためにヱホバにいのりければヱホバこれにこたへたまふ 10 サムエル燔祭はんさいをささげ居をりし時ときペリシテ人びとイスラエル人びとと戰たゝかはんとて近󠄃ちかづきぬ是この日ひヱホバ大おほいなる雷いかづちをくだしペリシテ人びとをうちて之これを亂みだし賜たまひければペリシテ人びとイスラエル人びとのまへに敗やぶれたり 11 イスラエル人びとミズパをいでてペリシテ人びとをおひ之これをうちてベテカルの下しもにいたる
 511㌻ 

12 サムエル一ひとつの石いしをとりてミズパとセンの間あひだにおきヱホバ是これまで我われらを助たすけたまへりといひて其その名なをエベネゼル(助たすけの石いし)と呼よぶ〘391㌻〙 13 ペリシテ人びと攻伏せめふせられて再ふたゝびイスラエルの境さかひにいらずサムエルの一生いつしやうのあひだヱホバの手てペリシテ人びとをふせげり 14 ペリシテ人びとのイスラエルより取とりたる邑々まち〳〵はエクロンよりガテまでイスラエルにかへりぬまた其その周󠄃圍󠄃まはりの地ちはイスラエル人びとこれをペリシテ人びとの手てよりとりかへせりまたイスラエル人びととアモリ人びとと好よしみをむすべり

15 サムエル一生いつしやうのあひだイスラエルをさばき 16 歳々とし〴〵ベテルとギルガルおよびミズパをめぐりて其その處々ところどころにてイスラエル人びとをさばき 17 またラマにかへれり此處こゝに其その家いへあり此こゝにてイスラエルをさばき又󠄂また此こゝにてヱホバに壇だんをきづけり

第8章

1 サムエル年とし老おいて其その子こをイスラエルの士師さばきつかさとなす 2 兄あにの名なをヨエルといひ弟おとうとの名なをアビヤといふベエルシバにありて士師さばきつかさたり 3 其その子こ父󠄃ちゝの道󠄃みちをあゆまずして利りにむかひ賄賂まひなひをとりて審判󠄄さばきを曲まぐ

4 是こゝにおいてイスラエルの長老としよりみなあつまりてラマにゆきサムエルの許もとに至いたりて 5 これにいひけるは視みよ汝なんぢは老おい汝なんぢの子こは汝なんぢの道󠄃みちをあゆまずさればわれらに王わうをたててわれらを鞫さばかしめ他ほかの國々くに〴〵のごとくならしめよと 6 その我われらに王わうをあたへて我われらを鞫さばかしめよといふを聞きゝてサムエルよろこばず而しかしてサムエル、ヱホバにいのりしかば 7 ヱホバ、サムエルにいひたまひけるは民たみのすべて汝なんぢにいふところのことばを聽きけ其そは汝なんぢを棄すつるにあらず我われを棄すて我われをして其その王わうとならざらしめんとするなり 8 かれらはわがエジプトより救すくひいだせし日ひより今日こんにちにいたるまで我われをすてて他ほかの神かみにつかへて種々さま〴〵の所󠄃行わざをなせしごとく汝なんぢにもまた然しかす
 512㌻ 
9 然しかれどもいま其その言ことばをきけ但たゞし深ふかくいさめて其その治をさむべき王わうの常例ならはしをしめすべし

10 サムエル王わうを求もとむる民たみにヱホバのことばをことごとく吿つげて 11 いひけるは汝等なんぢらををさむる王わうの常例ならはしは斯かくのごとし汝なんぢらの男子むすこをとり己おのれのために之これをたてて車くるまの御者ぎよしやとなし騎兵きへいとなしまた其その車くるまの前󠄃驅さきばしりとなさん 12 また之これをおのれの爲ために千夫せんにんの長かしら五十夫ごじふにんの長かしらとなしまた其その地ちをたがへし其その作さく物もつを刈からしめまた武器ぶきと車しや器きとを造󠄃つくらしめん 13 また汝なんぢらの女子むすめをとりて製香者かをりづくりとなし厨婢くりやびととなし炙麺者ぱんやきとなさん 14 又󠄂また汝なんぢらの田畝たはたと葡萄園ぶだうばたけと橄欖かんらん園ばたけの最もつとも善よきところを取とりて其その臣僕けらいにあたへ 15 汝なんぢらの穀物こくもつと汝なんぢらの葡萄ぶだうの什分󠄃じふぶ一いちをとりて其その官吏󠄄くわんりと臣僕けらいにあたへ〘392㌻〙 16 また汝なんぢらの僕しもべ婢しもめおよび汝なんぢらの最もつとも善よき牛うしと汝なんぢらの驢馬ろばを取とりておのれのために作はたらかしめ 17 又󠄂また汝なんぢらの羊ひつじの十分󠄃じふぶ一いちをとり又󠄂また汝なんぢらを其その僕しもべとなさん 18 其その日ひにおいて汝等なんぢら己おのれのために擇えらみし王わうのことによりて呼號よばはらんされどヱホバ其その日ひに汝なんぢらに聽きゝたまはざるべしと

19 然しかるに民たみサムエルの言ことばにしたがふことをせずしていひけるは否いなわれらに王わうなかるべからず 20 我われらも他ほかの國々くに〴〵の如ごとくになり我われらの王わうわれらを鞫さばきわれらを率󠄃ひきゐて我われらの戰いくさにたたかはん 21 サムエル民たみのことばを盡こと〴〵く聞きゝて之これをヱホバの耳みゝに吿つぐ 22 ヱホバ、サムエルにいひたまひけるはかれらのことばを聽ききかれらのために王わうをたてよサムエル、イスラエルの人々ひと〴〵にいひけるは汝なんぢらおのおの其その邑まちにかへるべし

第9章

1 茲こゝにベニヤミンの人ひとにてキシと名なづくる力ちからの大おほいなるものありキシはアビエルの子こアビニルはゼロンの子こゼロンはベコラテの子こベコラテはアビヤの子こアビヤはベニヤミンの子こなり 2 キシにサウルと名なづくる子こあり壯さかりにして美うるはしイスラエルの子孫ひと〴〵の中うちに彼かれより美うるはしき者ものたく肩󠄃かたより上うへ民たみのいづれの人ひとよりも高たかし
 513㌻ 
3 サウルの父󠄃ちゝキシの驢馬ろば失うせぬキシ其その子こサウルにいひけるは一人ひとりの僕わかものをともなひ起󠄃たちてゆき驢馬ろばを尋󠄃たづねよ 4 サウル、ニフライムの山地やまちを通󠄃とほり過󠄃すぎシヤリシヤの地ちを通󠄃とほりすぐれども見みあたらずシヤリムの地ちを通󠄃とほりすぐれども居をらずベニヤミンの地ちをとほりすぐれども見みあたらず

5 かれらツフの地ちにいたれる時ときサウル其そのともなへる僕わかものにいひけるはいざ還󠄃かへらん恐おそらくはわが父󠄃ちゝ驢馬ろばの事ことを措おきて我等われらの事ことを思おもひ煩わづらはん 6 僕わかものこれにいひけるは此この邑まちに神かみの人ひとあり尊󠄅たふとき人ひとにして其その言いふところは皆みな必かならず成󠄃なる我われらかしこにいたらんかれ我われらがゆくべき路みちをわれらにしめすことあらん 7 サウル僕わかものにいひけるは我われらもしゆかば何なにを其人そのひとにおくらんか器うつはのパンは旣󠄁すでに罄つきて神かみの人ひとにおくるべき禮物ものあらず何なにかあるや 8 僕わかものまたサウルにこたへていひけるは視みよわが手てに銀ぎん一シケルの四分󠄃ぶんの一あり我われこれを神かみの人ひとにあたへて我われらに路みちをしめさしめんと 9 昔むかしイスラエルにおいては人ひと神かみにとはんとてゆく時ときはいざ先見者せんけんしやにゆかんといへり其そは今いまの預言者よげんしやは昔むかしは先見者せんけんしやとよばれたればなり 10 サウル僕わかものにいひけるは善よくいへりいざゆかんとて神かみの人ひとのをる邑まちにおもむけり

11 かれら邑まちにいる坂さかをのぼれる時とき童わかき女をんな數󠄄人すにんの水みづくみにいづるにあひ之これにいひけるは先見者せんけんしやは此こゝにをるや〘393㌻〙 12 答こたへていひけるはをる視みよ汝なんぢのまへにをる急󠄃いそぎゆけ今日けふ民たみ崇邱たかをかにて祭まつりをなすにより彼かれけふ邑まちにきたれり 13 汝なんぢら邑まちにる時ときかれが崇邱たかをかにのぼりて食󠄃しよくに就つくまへに直たゞちちにかれにあはん其そは彼かれまづ祭品そなへものを祝しゆくしてしかるのち招まねかれたる者もの食󠄃くらふべきに因よりかれが來きたるまでは民たみ食󠄃くらはざるなり故ゆゑに汝なんぢらのぼれ今いまかれにあはんと 14 かれら邑まちにのぼりて邑まちのなかにいるとき視みよサムエル崇邱たかをかにのぼらんとてかれらにむかひて出いできたりぬ
 514㌻ 

15 ヱホバ、サウルのきたる一日いちにちまへにサムエルの耳みゝにつげていひたまひけるは 16 明日あくるひいまごろ我われベニヤミンの地ちより一箇ひとりの人ひとを汝なんぢにつかはさん汝なんぢかれに膏あぶらを注そゝぎてわが民たみイスラエルの長かしらとなせかれわが民たみをペリシテ人びとの手てより救すくひいださんわが民たみのさけび我われに達󠄃たつせしにより我われ是これをかへりみるなり 17 サムエル、サウルを見みるときヱホバこれにいひたまひけるは視みよわが汝なんぢにつげしは此人このひとなり是この人ひとわが民たみををさむべし 18 サウル門もんの中なかにてサムエルにちかづきいひけるは先見者せんけんしやの家いへはいづくにあるや請󠄃こふ我われにつげよ 19 サムエル、サウルにこたへていひけるは我われはすなはち先見者せんけんしやなり汝なんぢわがまへにゆきて崇邱たかをかにのぼれ汝なんぢら今日けふ我われとともに食󠄃しよくす可べし明日あくるひわれ汝なんぢをさらしめ汝なんぢの心こゝろにあることを悉こと〴〵く汝なんぢにしめさん 20 三日みつかまへに失うせたる汝なんぢの驢馬ろばは旣󠄁すでに見みあたりたれば之これをおもふなかれ抑そもそもイスラエルの總󠄂すべての寳たからは誰たれの者ものなるや即すなはち汝なんぢと汝なんぢの父󠄃ちゝの家いへのものならずや 21 サウルこたへていひけるは我われはイスラエルの支󠄂派󠄄わかれの最もつとも小ちひさき支󠄂派󠄄わかれなるベニヤミンの人ひとにしてわが族やからはベニヤミンの支󠄂派󠄄わかれの諸もろ〳〵の族やからの最もつとも小ちひさき者ものに非あらずやなんぞ斯かゝる事ことを我われにかたるや

22 サムエル、サウルと其その僕わかものをみちびきて堂だうにいり招まねかれたる三十人にんばかりの者ものの中うちの最もつとも上かみに坐ざせしむ 23 サムエル庖󠄃人くりやびとにいひけるはわが汝なんぢにわたして汝なんぢの許もとにおけといひし分󠄃ぶんをもちきたれ 24 庖󠄃人くりやびと肩󠄃かたと肩󠄃かたに屬つける者ものをとりあげて之これをサウルのまへに置おくサムエルいひけるは視みよ是これは存たくはへおきたる物ものなり汝なんぢのまへにおきて食󠄃くらへ其そはわれ民たみをまねきし時ときよりこれを汝なんぢの爲ためにたくはへおきたればなりかくてサウル此この日ひサムエルとともに食󠄃しよくせり

25 崇邱たかをかをくだりて邑まちにいりし時ときサムエル、サウルとともに屋背やねの上うへにてものがたる 26 かれら早はやくおく即すなはちサムエル曙󠄃あけぼのに屋背やねの上うへなるサウルをよびていけるは起󠄃おきよわれ汝なんぢをかへさんとサウルすなはちおきあがるサウルとサムエルともに外そとにいで〘394㌻〙
 515㌻ 
27 邑まちの極處はてにくだれるときサムエル、サウルにいひけるは僕わかものに命めいじて我等われらの先さきにゆかしめよ(僕わかもの先さきにゆく)しかして汝なんぢ暫しばらくとゞまれ我われ汝なんぢに神かみの言ことばをしめさん

第10章

1 サムエルすなはち膏あぶらの瓶びんをとりてサウルの頭かうべに沃そゝぎ口くち接つけして曰いひけるはヱホバ汝なんぢをたてて其その產業さんげふの長かしらとなしたまふにあらずや 2 汝なんぢ今日けふ我われをはなれて去さりゆく時ときベニヤミンの境さかひのゼルザにあるラケルの墓はかのかたはらにて二人ふたりの人ひとにあふべしかれら汝なんぢにいはん汝なんぢがたづねにゆきし驢馬ろばは見みあたりぬ汝なんぢの父󠄃ちゝ驢馬ろばのことをすてて汝なんぢらのことをおもひわづらひわが子この事ことをいかがすべきやといへりと 3 其處そこより汝なんぢ尙なほすすみてタボルの橡かしの樹きのところにいたらんに彼處かしこにてベテルにのぼり神かみにまうでんとする三人にんの者もの汝なんぢにあはん一人ひとりは三頭みつの山羊羔やぎのこを携たづさへ一人ひとりは三團みつのパンをたづさへ一人ひとりは一嚢ひとふくろの酒さけをたづさふ 4 かれら汝なんぢに安否あんぴをとひ二團ふたつのパンを汝なんぢにあたへん汝なんぢ之これを其その手てよりうくべし 5 其その後のち汝なんぢ神かみのギベアにいたらん其處そこにペリシテ人びとの代だい官くわんあり汝なんぢ彼處かしこにゆきて邑まちにいるとき一群ひとくみの預言者よげんしやの瑟しつと鼗つづみと笛ふえと琴ことを前󠄃まへに執とらせて預言よげんしつつ崇邱たかをかをくだるにあはん 6 其その時とき神かみのみたま汝なんぢにのぞみて汝なんぢかれらとともに預言よげんし變かはりて新あたらしき人ひととならん 7 是これらの徴しるし汝なんぢの身みにおこらば手てのあたるにまかせて事ことを爲なすべし神かみ汝なんぢとともにいませばなり 8 汝なんぢ我われにさきだちてギルガルにくだるべし我われ汝なんぢの許もとにくだりて燔祭はんさいを供そなへ酬恩祭しうおんさいを献さゝげんわが汝なんぢのもとに至いたり汝なんぢの爲なすべきことを示しめすまで汝なんぢ七日なぬかのあひだ待まつべし

9 サウル背せをかへしてサムエルを離はなれし時とき神かみ之これに新あたらしき心こゝろをあたへたまふしかして此このしるし皆みな其その日ひにおこれり 10 ふたり彼處かしこにゆきてギベアにいたれるときみよ一群ひとくみの預言者よげんしやこれにあふしかして神かみの靈みたまサウルにのぞみてサウルかれらの中うちにありて預言よげんせり
 516㌻ 
11 素もとよりサウルを識しる人々ひと〴〵サウルの預言よげん者しやと偕ともに預言よげんするを見みて互たがひにいひけるはキシの子こサウル今いま何事なにごとにあふやサウルも預言者よげんしやの中うちにあるやと 12 其その處ところの人ひとひとり答こたへて彼等かれらの父󠄃ちゝは誰たれぞやといふ是故このゆえにサウルも預言者よげんしやの中うちにあるやといふは諺ことわざとなれり 13 サウル預言よげんを終󠄃をへて崇邱たかをかにいたるに

14 サウルの叔父󠄃をぢサウルと僕わかものにいひけるは汝なんぢら何處いづくにゆきしやサウルいひけるは驢馬ろばを尋󠄃たづねに出いでしが何處いづくにもをらざるを見みてサムエルの許もとにいたれり 15 サウルの叔父󠄃をぢいひけるはサムエルは汝なんぢに何なにをいひしか請󠄃こふ我われにつげよ〘395㌻〙 16 サウル叔父󠄃をぢにいひけるは明あきらかに驢馬ろばの見みあたりしを吿つげたりと然しかれどもサムエルが言いへる國こく王わうの事ことはこれにつげざりき

17 サムエル民たみをミヅパにてヱホバのまへに集あつめ 18 イスラエルの子孫ひと〴〵にいひけるはイスラエルの神かみヱホバ斯かくいひたまふ我われイスラエルをみちびきてエジプトより出いだし汝なんぢらをエジプト人びとの手ておよび凡すべて汝なんぢらを虐󠄃遇󠄃しへたぐる國人くにびとの手てより救すくひいだせり 19 然しかるに汝なんぢらおのれを患難なやみと難苦くるしみのうちより救すくひいだしたる汝なんぢらの神かみを棄すて且かつ否いなわれらに王わうをたてよといへり是故このゆえにいま汝等なんぢらの支󠄂派󠄄わかれと群ぐんにしたがひてヱホバのまへに出いでよ 20 サムエル、イスラエルの諸もろ〳〵の支󠄂派󠄄わかれを呼よびよせし時ときベニヤミンの支󠄂派󠄄わかれ籤くじにあたりぬ 21 またベニヤミンの支󠄂派󠄄わかれを其その族やからのかずにしたがひて呼よびよせしときマテリの族やから籤くじにあたりキシの子こサウル籤くじにあたれり人々ひと〴〵かれを尋󠄃たづねしかども見み出いださざれば 22 またヱホバに其人そのひとは此こゝに來きたるや否いなやを問とひしにヱホバ答こたへたまはく視みよ彼かれは行李にのあひだにかくると 23 人々ひと〴〵はせゆきて彼かれを其處そこよりつれきたれり彼かれ民たみの中うちにたつに肩󠄃かたより以上うへ民たみの何いづれの人ひとよりも高たかかりき 24 サムエル民たみにいひけるは汝なんぢらヱホバの擇えらみたまひし人ひとを見みるか民たみのうちに是この人ひとの如ごとき者ものとし民たみみなよばはりいひけるは願ねがはくは王わういのちながかれ
 517㌻ 

25 時ときにサムエル王わう國こくの典章のりを民たみにしめして之これを書しよにしるし之これをヱホバのまへに藏をさめたりしかしてサムエル民たみをことごとく其その家いへにかへらしむ 26 サウルもまたギベアの家いへにかへるに神かみに心こゝろを感かんぜられたる勇󠄃士ゆうし等らこれとともにゆけり 27 然しかれども邪󠄅よこしまなる人々ひと〴〵は彼人かのひといかで我われらを救すくはんやといひて之これを蔑視あなどり之これに禮物れいもつをおくらざりしかどサウルは啞あふしのごとくせり

第11章

1 アンモニ人びとナハシ、ギレアデのヤベシにのぼりて之これを圍󠄃かこむヤベシの人々ひと〴〵ナハシにいひけるは我われらと約やくをなせ然しからば汝なんぢにつかへん 2 アンモニ人びとナハシこれに答こたへけるは我われかくして汝なんぢらと約やくをなさん即すなはち我われ汝なんぢらの右みぎの目めを抉くじりてイスラエルの全󠄃地ぜんちに恥辱はぢをあたへん 3 ヤベシの長老としよりこれにいひけるは我われらに七日なぬかの猶󠄅予ひまをあたへて使󠄃つかひをイスラエルの四方よもの境さかひにおくることを得えさしめよ而しかして若もし我われらを救すくふ者ものなくば我われら汝なんぢにくだらん 4 斯かくて使󠄃つかひサウルのギベアにいたり此事このことを民たみの耳みゝに吿つげしかば民たみ皆みな聲こゑをあげて哭なきぬ 5 爰こゝにサウル田はたより牛うしにしたがひて來きたるサウルいひけるは民たみ何なにによりて哭なくやと人々ひと〴〵これにヤベシ人びとの事ことを吿つぐ〘396㌻〙

6 サウル之これを聞きけるとき神かみの靈みたまこれに臨のぞみてその怒いかり甚はなはだしく燃もえたち 7 一ひと軛くびきの牛うしをころしてこれを切きり割󠄅さき使󠄃つかひの手てをもてこれをイスラエルの四方よもの境さかひにあまねくおくりていはしめけるは誰たれにてもサウルとサムエルにしたがひて出いでざる者ものは其その牛うしかくのごとくせらるべしと民たみヱホバを畏かしこみ一人ひとりのごとく均ひとしくいでたり 8 サウル、ベゼクにてこれを數󠄄かぞふるにイスラエルの子孫ひと〴〵三十萬まんユダの人ひと三萬まんありき 9 斯かくて人々ひと〴〵來きたれる使󠄃つかひにいひけるはギレアデのヤベシの人ひとにかくいへ明日あす日ひの熱あつき時とき汝なんぢら助たすけを得えんと使󠄃つかひかへりてヤベシ人びとに吿つげければ皆みなよろこびぬ 10 是こゝをもてヤベシの人ひと云いひけるは明日あす汝なんぢらに降󠄄くだらん汝なんぢらの善よしと思おもふところを爲なせ
 518㌻ 
11 明日あくるひサウル民たみを三隊󠄄みくみにわかち曉更󠄃あかつきに敵てきの軍ぐんの中なかにいりて日ひの熱あつくなる時ときまでアンモニ人びとをころしければ遺󠄃のこれる者ものは皆みなちりぢりになりて二人ふたり俱ともにあるものなかりき

12 民たみサムエルにいひけるはサウル豈いかで我われらの王わうとなるべけんやと言いひしは誰たれぞや其人そのひとを引ひき來きたれ我われら之これをころさん 13 サウルいひけるは今日けふヱホバ救すくひをイスラエルに施ほどこしたまひたれば今日けふは人ひとをころすべからず

14 茲こゝにサムエル民たみにいひけるはいざギルガルに往󠄃ゆきて彼處かしこにて王わう國こくを新あらたにせんと 15 民たみみなギルガルにゆきて彼處かしこにてヱホバのまへにサウルを王わうとなし彼處かしこにて酬恩祭しうおんさいをヱホバのまへに献さゝげサウルとイスラエルの人々ひと〴〵皆みなかしこにて大おほいに祝いはへり

第12章

1 サムエル、イスラエルの人々ひと〴〵にいひけるは視みよ我われ汝なんぢらが我われにいひし言ことばをことごとく聽きゝて汝なんぢらに王わうを立たてたり 2 見みよ今いま王わう汝なんぢらのまへにあゆむ我われは老おいて髮かみしろし視みよわが子こども汝なんぢらと共ともにあり我われ幼稚時いとけなきときより今日こんにちにいたるまで汝等なんぢらのまへにあゆめり 3 視みよ我われここにありヱホバのまへと其その膏あぶらそそぎし者もののまへに我われを訴うつたへよ我われ誰たれの牛うしを取とりしや誰たれの驢馬ろばをとりしや誰たれを掠かすめしや誰たれを虐󠄃遇󠄃くるしめしや誰たれの手てより賄賂まひなひをとりてわが目めを矇くらませしや有󠄃あらば我われこれを汝なんぢらにかへさん 4 彼かれらいひけるは汝なんぢは我われらをかすめずくるしめず又󠄂また何なにをも人ひとの手てより取とりしことなし 5 サムエルかれらにいひけるは汝なんぢらが我わが手てのうちに何なにをも見みいださざるをヱホバ汝なんぢらに證あかししたまふ其その膏あぶらそそぎし者ものも今日こんにち證あかしす彼かれら答こたへけるは證あかししたまふ

6 サムエル民たみにいひけるはヱホバはモーセとアロンをたてし者もの汝なんぢらの先祖せんぞをエジプトの地ちより導󠄃みちびきいだせしものなり〘397㌻〙
 519㌻ 
7 立たちあがれヱホバが汝なんぢらおよび汝なんぢらの先祖せんぞになしたまひし諸もろ〳〵の義たゞしき行爲わざにつきて我われヱホバのまへに汝なんぢらと論ろんぜん 8 ヤコブのエジプトにいたるにおよびて汝なんぢらの先祖せんぞのヱホバに呼よばはりし時ときヱホバ、モーセとアロンを遣󠄃つかはしたまひて此この二人ふたり汝なんぢらの先祖せんぞをエジプトより導󠄃みちびきいだして此處このところにすましめたり 9 しかるに彼かれら其その神かみヱホバを忘󠄃わすれしかばヱホバこれをハゾルの軍ぐんの長かしらシセラの手てとペリシテ人びとの手ておよびモアブ王わうの手てにわたしたまへり斯かくて彼かれらこれを攻せめければ 10 民たみヱホバに呼よばはりていひけるは我われらヱホバを棄すててバアルとアシタロテに事つかへてヱホバに罪つみを犯をかしたりされど今いま我われらを敵てきの手てより救すくひいだしたまへ我われら汝なんぢにつかへんと 11 是こゝにおいてヱホバ、ヱルバアルとバラクとエフタとサムエルを遣󠄃つかはして汝なんぢらを四方よもの敵てきの手てより救すくひいだしたまひて汝なんぢら安やすらかに住󠄃すめり 12 しかるに汝なんぢらアンモンの子孫ひと〴〵の王わうナハシの汝なんぢらを攻せめんとて來きたるを見みて汝なんぢらの神かみヱホバ汝なんぢらの王わうなるに汝なんぢら我われにいふ否いな我われらををさむる王わうなかるべからずと 13 今いま汝なんぢらが選󠄄えらみし王わう汝なんぢらがねがひし王わうを見みよ視みよヱホバ汝なんぢらに王わうをたてたまへり 14 汝なんぢらもしヱホバを畏かしこみて之これにつかへ其その言ことばにしたがひてヱホバの命めいにそむかずまた汝なんぢらと汝なんぢらををさむる王わう恒つねに汝なんぢらの神かみヱホバに從したがはば善よし 15 しかれども汝なんぢらもしヱホバの言ことばにしたがはずしてヱホバの命めいにそむかばヱホバの手て汝なんぢらの先祖せんぞをせめしごとく汝なんぢらをせむべし 16 汝なんぢら今いまたちてヱホバが爾なんぢらの目めのまへになしたまふ此この大おほいなる事ことを見みよ 17 今日けふは麥むぎ刈かり時どきにあらずや我われヱホバを呼よばんヱホバ雷いかづちと雨あめをくだして汝なんぢらが王わうをもとめてヱホバのまへに爲なしたる罪つみの大おほいなるを見しめしらしめたまはん 18 かくてサムエル、ヱホバをよびければヱホバ其その日ひ雷いかづちと雨あめをくだしたまへり民たみみな大おほいにヱホバとサムエルを恐おそる
 520㌻ 

19 民たみみなサムエルにいひけるは僕しもべらのために汝なんぢの神かみヱホバにいのりて我われらを死しなざらしめよ我われら諸もろ〳〵の罪つみにまた王わうを求もとむるの惡あくをくはへたればなり 20 サムエル民たみにいひけるは懼おそるなかれ汝なんぢらこの總󠄂すべての惡あくをなしたりされどヱホバに從したがふことを息やめず心こゝろをつくしてヱホバに事つかへ 21 虛むなしき物ものに迷󠄃まよひゆくなかれ是これは虛むなしき物ものなれば汝なんぢらを助たすくることも救すくふことも得えざるなり 22 ヱホバ其その大おほいなる名なのために此この民たみをすてたまはざるべし其そはヱホバ汝なんぢらをおのれの民たみとなすことを善よしとしたまへばなり 23 また我われは汝なんぢらのために祈いのることをやめてヱホバに罪つみををかすことは決きはめてせざるべし且かつわれ善よき正たゞしき道󠄃みちをもて汝なんぢらををしへん〘398㌻〙 24 汝なんぢら只たゞヱホバをかしこみ心こゝろをつくして誠󠄃まことにこれにつかへよ而しかして如何いかに大おほいなることをヱホバ汝なんぢらになしたまひしかを思おもふ可べし 25 しかれども汝なんぢらもしなほ惡あくをなさば汝なんぢらと汝なんぢらの王わうともにほろぼさるべし

第13章

1 サウル三十歳さいにて王わうの位くらゐに即つく彼かれ二年ねんイスラエルををさめたり 2 爰こゝにサウル、イスラエル人びと三千せんを擇えらむ其その二千せんはサウルとともにミクマシおよびベテルの山地やまちにあり其その一千せんはヨナタンとともにベニヤミンのギベアにあり其その餘よの民たみはサウルおのおの其その幕屋まくやにかへらしむ 3 ヨナタン、ゲバにあるペリシテ人びとの代だい官くわんをころせりペリシテ人びと之これをきく是こゝにおいてサウル國こく中ちうにあまねくラツパを吹ふいていはしめけるはヘブル人びとよ聞きくべし 4 イスラエル人びと皆みな聞きけるに云いはくサウル、ペリシテ人びとの代だい官くわんを擊うてりしかしてイスラエル、ペリシテ人びとの中うちに惡にくまると斯かくて民たみめされてサウルにしたがひギルガルにいたる

5 ペリシテ人びとイスラエルと戰たゝかはんとて集あつまりけるが兵いくさ車ぐるま三百びやく騎兵きへい六千せんにして民たみは濱はまの沙いさごの多おほきがごとくなりき彼かれらのぼりてベテアベンにむかへるミクマシに陣ぢんをとれり 6 イスラエルの人ひと苦くるしめられ其その危あやふきを見みて皆みな巖穴󠄄ほらに林叢やぶに崗巒いはに高塔たふに坎阱あなにかくれたり
 521㌻ 
7 また或あるヘブル人びとはヨルダンを渉わたりてガドとギレアデの地ちにいたる然しかるにサウルは尙なほギルガルにあり民たみ皆みな戰慄ふるひて之これにしたがふ

8 サウル、サムエルの定さだめし期きにしたがひて七日なぬかとゞまりしがサムエル、ギルガルに來きたらず民たみはなれて散ちりければ 9 サウルいひけるは燔祭はんさいと酬恩祭しうおんさいを我われにもちきたれと遂󠄅つひに燔祭はんさいをささげたり 10 燔祭はんさいをささぐることを終󠄃をへしときに視みよサムエルいたるサウル安否あんぴを問とはんとてこれをいで迎󠄃むかふに 11 サムエルいひけるは汝なんぢ何なにをなせしやサウルいひけるは我民わがたみの我われをはなれてちりまた汝なんぢの定さだまれる日ひのうちに來きたらずしてペリシテ人びとのミクマシに集あつまれるを見みしかば 12 ペリシテ人びとギルガルに下くだりて我われをおそはんに我われいまだヱホバをなごめずといひて勉つとめて燔祭はんさいをささげたり 13 サムエル、サウルにいひけるは汝なんぢおろかなることをなせり汝なんぢその神かみヱホバのなんぢに命めいじたまひし命令めいれいを守まもらざりしなり若もし守まもりしならばヱホバ、イスラエルををさむる位くらゐを永ながく汝なんぢに定さだめたまひしならん 14 然しかれどもいま汝なんぢの位くらゐたもたざるべしヱホバ其心そのこころに適󠄄かなふ人ひとを求もとめてヱホバ之これに其その民たみの長かしらを命めいじたまへり汝なんぢがヱホバの命めいぜしことを守まもらざるによる〘399㌻〙 15 かくてサムエルたちてギルガルよりベニヤミンのギベアにのぼりいたる   サウルおのれとともにある民たみをかぞふるに凡およそ六百ぴやく人にんありき

16 サウルおよび其その子こヨナタン並ならびにこれとともにある民たみはベニヤミンのゲバに居をりペリシテ人びとはミクマシに陣ぢんを張はる 17 劫掠ぶんどり人びと三隊󠄄みくみにわかれてペリシテ人びとの陣ぢんよりいで一隊󠄄ひとくみはオフラの路みちにむかひてシユアルの地ちにいたり 18 一隊󠄄ひとくみはベテホロンの道󠄃みちに向むかひ一隊󠄄ひとくみは曠野あらのの方かたにあるゼボイムの谷たにをのぞむ境さかひの路みちにむかふ

19 時ときにイスラエルの地ちのうち何處いづこにも鐵工かぢなかりき是こはペリシテ人びとヘブル人びとの劍かたなあるひは槍やりを作つくることを恐おそれたればなり
 522㌻ 
20 -21 イスラエル人びと皆みな其その耜󠄃すき鋤くは斧をの耒からすき即すなはち耜󠄃すき鋤くは三齒みつば鍬ぐは斧をのの錣はに缺かけありてこれを鍛きたひ改なほさんとする時とき又󠄂または鞭むちを尖とがらさんとする時ときは常つねにペリシテ人びとの所󠄃ところにくだれり 22 是こゝをもて戰たたかひの日ひにサウルおよびヨナタンとともにある民たみの手てには劍かたなも槍やりも見みえず只たゞサウルと其その子こヨナタンのみ持もてり 23 茲こゝにペリシテ人びとの先陣さきぞなへミクマシの渡口わたりに進󠄃すゝむ

第14章

1 其時そのときサウルの子こヨナタン武器ぶきを執とる若わか者ものにいひけるはいざ對面むかふにあるペリシテ人びとの先さき陣ぞなへに渉わたりゆかんと然されど其その父󠄃ちゝには吿つげざりき 2 サウル、ギベアの極はてにおいてミグロンにある石榴じやくろの樹きの下したに住󠄃とゞまりしが俱ともにある民たみはおよそ六百ぴやく人にんなりき 3 又󠄂またアヒヤ、エポデを衣きてともにをるアヒヤはアヒトブの子こアヒトブはイカボデの兄弟きやうだいイカボデばピネハスの子こピネハスはシロにありてヱホバの祭司さいしたりしエリの子こなり民たみヨナタンの行ゆけるをしらざりき 4 ヨナタンの渉わたりてペリシテ人びとの先さき陣ぞなへにいたらんとする渡口わたりの間あひだに此傍こなたに巉巖いはほあり彼傍かなたにも巉巖いはほあり一ひとつの名なをボゼツといひ一ひとつの名なをセネといふ 5 其その一ひとつは北きたに向むかひてミクマシに對たいし一ひとつに南みなみにむかひてゲバに對たいす

6 ヨナタン武器ぶきを執とる少者わかものにいふいざ我われら此この割󠄅禮かつれいなき者ものどもの先さき陣ぞなへにわたらんヱホバ我われらのためにはたらきたまことあらん多おほくの人ひとをもて救すくふも少すくなき人ひとをもてすくふもヱホバにおいては妨さまたげなし 7 武器ぶきをとるもの之これにいひけるは總󠄂すべて汝なんぢの心こゝろにあるところをなせ進󠄃すゝめよ我われ汝なんぢの心こゝろにしたがひて汝なんぢとともにあり 8 ヨナタンいひけるは見みよ我われらかの人々ひと〴〵のところにわたり身みをかれらにあらはさん 9 かれら若もし我われらが汝なんぢらにいたるまでとゞまれと斯かく我われらにいはば我われらはこのままとゞまりてかれらの所󠄃ところにのぼらじ〘400㌻〙 10 されど若もし我われらのところにのぼれとかくいはば我われらのぼらんヱホバかれらを我われらの手てにわたしたまふなり是これを徴しるしとなさんと
 523㌻ 
11 斯かくて二人ふたり其その身みをペリシテ人びとの先さき陣ぞなへにあらはしければペリシテ人びといひけるは視みよヘブル人びと其そのかくれたる穴󠄄あなよりいで來きたると 12 すなはち先さき陣ぞなへの人ひとヨナタンと其その武器ぶきを執とる者ものにこたへて我等われらの所󠄃ところに上のぼりきたれ目めに物もの見みせんといひしかばヨナタン武器ぶきを執とる者ものにいひけるは我われにしたがひてのぼれヱホバ彼かれらをイスラエルの手てにわたしたまふなり 13 ヨナタン攀よぢのぼり其その武器ぶきを執とるもの之これにしたがふペリシテ人びとヨナタンのまへに仆たふる武器ぶきをとる者ものも後うしろにしたがひて之これをころす 14 ヨナタンと其その武器ぶきを取とるもの手てはじめに殺ころせし者ものおよそ二十人にん此事このこと田畑はたけ半󠄃はん段だんの內うちになれり 15 しかして野のにある陣ぢんのものおよび凡すべての民たみの中うちに戰慄おののきおこり先陣さきぞなへの人ひとおよび劫掠ぶんどり人びともまたおののき地ちふるひ動うごけり是こは神かみよりの戰慄をののきなりき

16 ベニヤミンのギベアにあるサウルの戌卒ものみ望󠄇のぞみ見みしに視みよペリシテ人びとの群衆ぐんしうくづれて此彼ここかしこにちらばる 17 時ときにサウルおのれとともなる民たみにいひけるは汝なんぢら點驗しらべて誰たが我われらの中うちよりゆきしかを見みよとすなはちしらべたるにヨナタンとその武器ぶきを執とるもの居をらざりき 18 サウル、アヒヤにエポデを持もちきたれといふ其そはかれ此時このときイスラエルのまへにエポデを著きたれば也なり 19 サウル祭司さいしにかたれる時ときペリシテ人びとの軍ぐんの騷さはぎいよいよましたりければサウル祭司さいしにいふ姑しばらく汝なんぢの手てを措おけと 20 かくてサウルおよびサウルと共ともにある民たみ皆みな呼よばはりて戰たゝかひに至いたるにペリシテ人びとおのおの劍かたなを以もて互たがひに相あひ擊うちければその敗績やぶれはなはだ大おほいなりき 21 また此時このときよりまへにペリシテ人びととともにありてペリシテ人びとと共ともに上のぼりて陣ぢんに來きたれるところのヘブル人びともまた飜ひるがへりてサウルおよびヨナタンと共ともにあるイスラエル人びとに合がつせり 22 又󠄂またエフライムの山地やまちにかくれたるイスラエル人びと皆みなペリシテ人びとの逃󠄄にぐるを聞きゝてまた戰たゝかひに出いでて之これを追󠄃擊おひうてり
 524㌻ 
23 是かくの如ごとくヱホバ此この日ひイスラエルをすくひたまふ而しかして戰たたかひはベテアベンにうつれり

24 されど此この日ひイスラエル人びと苦くるしめり其そはサウル民たみを誓ちかはせて夕よひまで即すなはちわが敵てきに仇あだをむくゆるまでに食󠄃物しよくもつを食󠄃くらふ者ものは呪詛のろはれんと言いひたればなり是故このゆえに民たみの中うちに食󠄃物しよくもつを味あじはひし者ものなし 25 爰こゝに民たみみな林森もりに至いたるに地ちの表おもてに蜜みつあり 26 即すなはち民たみ森もりにいたりて蜜みつのながるるをみる然しかれども民たみ誓ちかひを畏おそるれば誰たれも手てを口くちにつくる者ものなし〘401㌻〙 27 然しかるにヨナタンは其その父󠄃ちゝが民たみをちかはせしを聞きかざりければ手てにある杖つゑの末さきをのばして蜜みつにひたし手てを口くちにつけたり是これに由よりて其その目めあきらかになりぬ 28 時ときに民たみのひとり答こたへて言いひけるは汝なんぢの父󠄃ちゝかたく民たみをちかはせて今日けふ食󠄃物しよくもつをくらふ人ひとは呪詛のろはれんと言いへり是これに由よりて民たみつかれたり 29 ヨナタンいひけるはわが父󠄃ちゝ國くにを煩わづらはせり請󠄃こふ我わがこの蜜みつをすこしく甞なめしによりて如何いかにわが目めの明あきらかになりしかを見みよ 30 ましてや民たみ今日けふ敵てきよりうばひし物ものを十分󠄃じふぶんに食󠄃くらひしならばペリシテ人びとをころすこと更󠄃さらにおほかるべきにあらずや

31 イスラエル人びとかの日ひペリシテ人びとを擊うちてミクマシよりアヤロンにいたる而しかして民たみはなはだ疲つかれたり 32 是こゝにおいて民たみ劫掠ぶんどり物ものに走はせかかり羊ひつじと牛うしと犢こうしとを取とりて之これを地ちのうへにころし血ちのままに之これをくらふ 33 人々ひと〴〵サウルにつげていひけるは民たみ肉󠄁にくを血ちのままに食󠄃くらひて罪つみをヱホバにをかすとサウルいひけるは汝なんぢら背そむけり直たゞちにわがもとに大おほ石いしをまろばしきたれ 34 サウルまたいひけるは汝なんぢらわかれて民たみのうちにいりていへ人ひと各おの〳〵其その牛うしと各おの〳〵其その羊ひつじをわがもとに引ひききたり此處こゝにてころしくらへ血ちのままにくらひて罪つみをヱホバに犯をかすなかれと此こゝにおいて民たみおのおのこの夜よ其その牛うしを手てにひききたりて之これをかしこにころせり 35 しかしてサウル、ヱホバに一つの壇だんをきづく是これはサウルのヱホバに壇だんを築きづける始はじめなり
 525㌻ 

36 斯かくてサウルいひけるは我われら夜よのうちにペリシテ人びとを追󠄃おひくだり夜明よあけまでかれらを掠かすめて一人ひとりをも殘のこすまじ皆みないひけるは凡すべて汝なんぢの目めに善よしとみゆる所󠄃ところをなせと時ときに祭司さいしいひけるは我われら此こゝにちかより神かみにもとめんと 37 サウル神かみに我われペリシテ人びとをおひくだるべきか汝なんぢかれらをイスラエルの手てにわたしたまふやと問とひけれど此この日ひはこたへたまはざりき 38 是こゝにおいてサウルいひけるは民たみの長かしらたちよ皆みな此こゝにちかよれ汝なんぢらみて今日けふのこの罪つみのいづくにあるを知しれ 39 イスラエルを救すくひたまへるヱホバはいく假令たとひわが子こヨナタンにもあれ必かならず死しなざるべからずとされど民たみのうち一人ひとりもこれにこたへざりき 40 サウル、イスラエルの人々ひと〴〵にいひけるはなんぢらは彼處かなたにをれ我われとわが子こヨナタンは此處こなたにをらんと民たみいひけるは汝なんぢの目めによしとみゆるところをなせ 41 サウル、イスラエルの神かみヱホバにいひけるはねがはくは眞󠄃實まことをしめしたまへとかくてヨナタンとサウル籤くじにあたり民たみはのがれたり 42 サウルいひけるは我われとわが子このあひだの䰗くじを掣ひけと即すなはちヨナタンこれにあたれり〘402㌻〙

43 サウル、ヨナタンにいひけるは汝なんぢがなせしところを我われに吿つげよヨナタンつげていひけるは我われは只たゞわが手ての杖つゑの末さきをもて少許すこしの蜜みつをなめしのみなるが我われしなざるをえず 44 サウルこたへけるは神かみかくなしまたかさねてかくなしたまヘヨナタンよ汝なんぢ死しなざるべからず 45 民たみサウルにいひけるはイスラエルの中うちに此この大おほいなるすくひをなせるヨナタン死しぬべけんや決きはめてしからずヱホバは生いくヨナタンの髮かみの毛けひとすぢも地ちにおつべからず其そはかれ神かみとともに今日けふはたらきたればなりとかく民たみヨナタンをすくひて死しなざらしむ 46 サウル、ペリシテ人びとを追󠄃おふことを息やめてのぼりぬペリシテ人びと其その國くににかへれり

47 かくてサウル、イスラエルの王わうの位くらゐにつきて四方よもの敵てきを攻せむ即すなはちモアブ、アンモンの子孫ひと〴〵エドム、ゾバの王わうたちおよびペリシテ人びとをせめけるに凡すべてむかふところにて勝󠄃利かちを得えたり
 526㌻ 
48 サウル力ちからをえアマレク人びとをうちてイスラエルを其その劫掠あらす人ひとの手てよりすくひいだせり

49 サウルの男子むすこはヨナタン、ヱスイおよびマルキシユアなり其その二人ふたりの女子むすめの名なは姉あねはメラブといひ妹いもうとはミカルといふ 50 サウルの妻つまの名なはアヒノアムといひてアヒマアズの女子むすめなり其その軍ぐんの長かしらの名なはアブネルといひてサウルの叔父󠄃をぢなるネルの子こなり 51 サウルの父󠄃ちゝキシとアブネルの父󠄃ちゝネルはアビエルの子こなり

52 サウルの一生いつしやうのあひだ恒つねにペリシテ人びとと烈はげしき戰たたかひありサウルは力ちからある人ひとまたは勇󠄃ゆうある人ひとを見みるごとにこれをかかへたり

第15章

1 茲こゝにサムエル、サウルにいひけるはヱホバ我われをつかはし汝なんぢに膏あぶらを沃そゝぎて其その民たみイスラエルの王わうとなさしめたりさればヱホバの言ことばの聲こゑをきけ 2 萬軍ばんぐんのヱホバかくいひたまふ我われアマレクがイスラエルになせし事ことすなはちエジプトよりのぼれる時とき其その途󠄃みちを遮󠄄さへぎりしをかへりみる 3 今いまゆきてアマレクを擊うち其その有󠄃もてる物ものをことごとく滅ほろぼしつくし彼かれらを憐あはれむなかれ男をとこ女をんな童稚をさなご哺乳󠄃兒ちのみご牛うし羊ひつじ駱駝らくだ驢馬ろばを皆みな殺ころせ

4 サウル民たみをよびあつめてこれをテライムに核󠄂かぞふ步兵ほへい二十萬まんユダの人ひと一萬まんあり 5 しかしてサウル、アマレクの邑まちにいたりて谷たにに兵へいを伏ふせたり 6 サウル、ケニ人びとにいひけるは汝なんぢらゆきてさりアマレク人びとをはなれくだるべし恐おそらくはかれらとともに汝なんぢらをほろぼすにいたらんイスラエルの子孫ひと〴〵のエジプトよりのぼれる時とき汝なんぢらこれに恩めぐみをほどこしたりと即すなはちケニ人びとアマレク人びとをはなれてさりぬ〘403㌻〙 7 サウル、アマレク人びとをうちてハビラよりエジプトの東面まへなるシユルにいたる 8 サウル、アマレク人びとの王わうアガグを生いけ擒どり刃󠄃やいばをもて其その民たみをことごとくほろぼせり
 527㌻ 
9 然しかれども、サウルと民たみアガグをゆるしまた羊ひつじと牛うしの最もつとも嘉よきもの及および肥こえたる物もの並ならびに羔こひつじと凡すべて善よき物ものを殘のこして之これをほろぼしつくすをこのまず但たゞ惡あしき弱󠄃よわき物ものをほろぼしつくせり

10 時ときにヱホバの言ことばサムエルにのぞみていはく 11 我われサウルを王わうとなせしを悔くゆ其そは彼かれ背そむきて我われにしたがはずわが命めいをおこなはざればなりとサムエル憂うれへて終󠄃夜よもすがらヱホバによばはれり 12 かくてサムエル、サウルにあはんとて夙はやく起󠄃おきけるにサムエルにつぐるものありていふサウル、カルメルにいたり勝󠄃利しやうりの表しるしを立たて轉まはり進󠄃すゝみてギルガルにくだれりと 13 サムエル、サウルの許もとに至いたりければサウルこれにいひけるは汝なんぢがヱホバより福祉さいはひを得えんことをねがふ我われヱホバの命めいを行おこなへりと 14 サムエルいひけるは然しからばわが耳みゝにいる此この羊ひつじの聲こゑおよびわがきく牛うしのこゑは何なんぞや 15 サウルいひけるは人々ひと〴〵これをアマレク人びとのところより引ひききたれり其そは民たみ汝なんぢの神かみヱホバにささげんために羊ひつじと牛うしの最もつとも嘉よきものをのこせばなり其そのほかは我われらほろぼしつくせり 16 サムエル、サウルにいけるは止とゞまれ昨夜さくやヱホバの我われにかたりたまひしことを汝なんぢにつげんサウルいひけるはいへ

17 サムエルいひけるはさきに汝なんぢが微ちひさき者ものとみづから憶おもへる時ときに爾なんぢイスラエルの支󠄂派󠄄わかれの長かしらとなりしに非あらずや即すなはちヱホバ汝なんぢに膏あぶらを注そゝいでイスラエルの王わうとなせり 18 ヱホバ汝なんぢを途󠄃みちに遣󠄃つかはしていひたまはく往󠄃ゆきて惡人あくにんなるアマレク人びとをほろぼし其その盡つくるまで戰たゝかへよと 19 何故なにゆゑに汝なんぢヱホバの言ことばをきかずして敵てきの所󠄃有󠄃物ものにはせかかりヱホバの目めのまへに惡あくをなせしや 20 サウル、サムエルにひけるは我われ誠󠄃まことにヱホバの言ことばにしたがひてヱホバのつかはしたまふ途󠄃みちにゆきアマレクの王わうアガグを執とりきたりアマレクをほろぼしつくせり 21 ただ民たみ其そのほろぼしつくすべき物ものの最初はつとしてギルガルにて汝なんぢの神かみヱホバにささげんとて敵てきの物ものの中うちより羊ひつじと牛うしをとれり 22 サムエルいひけるはヱホバはその言ことばにしたがふ事ことを善よみしたまふごとく燔祭はんさいと犧牲いけにへを善よみしたまふや夫それ順したがふ事ことは犧牲いけにへにまさり聽きく事ことは牡羔をひつじの脂あぶらにまさるなり
 528㌻ 
23 其そは違󠄇逆󠄃そむくことは魔󠄃術󠄃まじゆつの罪つみのごとく抗戻󠄃さからふことは虛むなしき物ものにつかふる如ごとく偶像󠄃ぐうざうにつかふるがごとし汝なんぢヱホバの言ことばを棄すてたるによりヱホバもまた汝なんぢをすてて王わうたらざらしめたまふ〘404㌻〙

24 サウル、サムエルにいひけるに我われヱホバの命めいと汝なんぢの言ことばをやぶりて罪つみををかしたり是こは民たみをおそれて其その言ことばにしたがひたるによりてなり 25 されば今いまねがはくはわがつみをゆるし我われとともにかへりて我われをしてヱホバを拜はいすることをえさしめよ 26 サムエル、サウルにいひけるは我われ汝なんぢとともにかへらじ汝なんぢヱホバの言ことばを棄すてたるによりヱホバ汝なんぢをすててイスラエルに王わうたらしめたまはざればなり 27 サムエル去さらんとて振ふり還󠄃かへりしときサウルその明衣うはぎの裾すそを捉とらへしかば裂さけたり 28 サムエルかれにいひけるは今日けふヱホバ、イスラエルの國くにを裂さきて汝なんぢよりはなし汝なんぢの隣となりなる汝なんぢより善よきものにこれをあたへたまふ 29 またイスラエルの能力ちからたる者ものは謊󠄃いつはらず悔くいず其そはかれは人ひとにあらざればくゆることなし 30 サウルいひけるは我われ罪つみををかしたれどねがはくはわが民たみの長老としよりのまへおよびイスラエルのまへにて我われをたふとみて我われとともにかへり我われをして汝なんぢの神かみヱホバを拜をがむことをえさしめよ 31 ここにおいてサムエル、サウルにしたがひてかへるしかしてサウル、ヱホバを拜をがむ

32 時ときにサムエルいひけるは汝なんぢらわが許もとにアマレクの王わうアガグをひききたれとアガグ喜よろこばしげにサムエルの許もとにきたりアガグいひけるは死しの苦くるしみは必かならず過󠄃すぎさりぬ 33 サムエルいひけるに汝なんぢの劍つるぎはおほくの婦󠄃人をんなを子こなき者ものとなせりかくのごとく汝なんぢの母はゝは婦󠄃人をんなの中うちの最もつとも子こなき者ものとなるべしとサムエル、ギルガルにてヱホバのまへにおいてアガグを斬きれり
 529㌻ 

34 かくてサムエルはラマにゆきサウルはサウルのギベアにのぼりてその家いへにいたる 35 サムエル其そのしぬる日ひまでふたゝびきたりてサウルをみざりきしかれどもサムエル、サウルのためにかなしめりまたヱホバはサウルをイスラエルの王わうとなせしを悔くいたまへり

第16章

1 爰こゝにヱホバ、サムエルにいひたまひけるは我われすでにサウルを棄すててイスラエルに王わうたらしめざるに汝なんぢいつまでかれのために歎なげくや汝なんぢの角つのに膏油あぶらを滿みたしてゆけ我われ汝なんぢをベテレヘム人びとヱサイの許もとにつかはさん其そは我われ其その子この中うちにひとりの王わうを尋󠄃たづねえたればなり 2 サムエルいひけるは我われいかで往󠄃ゆくことをえんサウル聞きいて我われをころさんヱホバいひたまひけるは汝なんぢ一犢こうしを携たづさへゆきて言いへヱホバに犧牲いけにへをささげんために來きたると 3 しかしてヱサイを犧牲いけにへの場ばによべ我われ汝なんぢが爲なすべき事ことをしめさん我わが汝なんぢに吿つぐるところの人ひとに膏あぶらをそそぐ可べし 4 サムエル、ヱホバの語いひたまひしごとくなしてベテレヘムにいたる邑まちの長老としよりおそれて之これをむかへいひけるは汝なんぢ平󠄃康おだやかなる事ことのためにきたるや〘405㌻〙 5 サムエルいひけるは平󠄃康おだやかなることのためなり我われはヱホバに犧牲いけにへをささげんとてきたる汝なんぢら身みをきよめて我われとともに犧牲いけにへの場ばにきたれと斯かくてヱサイと其その諸子こどもらを潔󠄄きよめて犧牲いけにへの場ばによびきたる

6 かれらが至いたれる時ときサムエル、エリアブを見みておもへらくヱホバの膏あぶらそそぐものは必かならず此人このひとならんと 7 しかるにヱホバ、サムエルにいひたまひけるは其その容貌かたちと身みの長たけを觀みるなかれ我われすでにかれをすてたりわが視みるところは人ひとに異ことなり人ひとは外そとの貌かたちを見みヱホバは心こゝろをみるなり 8 ヱサイ、ヘアビナダブをよびてサムエルのまへを過󠄃すぎしむサムエルいひけるは此人このひともまたヱホバ擇えらみたまはず 9 ヱサイ、シヤンマを過󠄃すぎしむサムエルいひけるは此人このひともまたヱホバえらみたまはず
 530㌻ 
10 ヱサイ其その七人にんの子こをしてサムエルの前󠄃まへをすぎしむサムエル、ヱサイにいふヱホバ是等これらをえらみたまはず 11 サムエル、ヱサイにいひけるは汝なんぢの男子むすこは皆みな此こゝにをるやヱサイいひけるは尙なほ季子すゑのこのこれり彼かれは羊ひつじを牧かひをるなりとサムエル、ヱサイにいひけるは彼かれを迎󠄃むかへきたらしめよかれが此こゝにいたるまでは我われら食󠄃しよくに就つかざるべし 12 是こゝにおいて人ひとをつかはしてかれをつれきたらしむ其人そのひと色いろ赤あかく目め美うるはしくして其その貌かたち麗󠄃うつくしヱホバいひたまひけるは起󠄃たちてこれにあぶらを沃そゝげ是これ其人そのひとなり 13 サムエル膏あぶらの角つのをとりて其その兄弟きやうだいの中なかにてこれに膏あぶらをそそげり此この日ひよりのちヱホバの靈みたまダビデにのぞむサムエルはたちてラマにゆけり

14 かくてヱホバの靈みたまサウルをはなれヱホバより來きたる惡あく鬼きこれを惱なやませり 15 サウルの臣僕しもべこれにいひけるは視みよ神かみより來きたれる惡あく鬼き汝なんぢをなやます 16 ねがはくはわれらの主しゆ汝なんぢのまへにつかふる臣僕しもべに命めいじて善よく琴ことを鼓ひく者もの一人ひとりを求もとめしめよ神かみよりきたれる惡あく鬼き汝なんぢに臨のぞむ時とき彼かれ手てをもて琴ことを鼓ひいて汝なんぢいゆることをえん 17 サウル臣僕しもべにいひけるはわがために巧たくみに鼓琴ことひく者ものをたづねてわがもとにつれきたれ 18 時ときに一人ひとりの少者わかものこたへていひけるは我われベテレヘム人びとヱサイの子こを見みしが琴ことに巧たくみにしてまた豪氣たけくして善よくたたかふ辯舌ことばさはやかなる美うるはしき人ひとなりかつヱホバこれとともにいます 19 サウルすなはち使󠄃者つかひをヱサイにつかはしていひけるは羊ひつじをかふ汝なんぢの子こダビデをわがもとに遣󠄃つかはせと 20 ヱサイすなはち驢馬ろばにパンを負󠄅おはせ一ひと嚢ふくろの酒さけと山羊やぎの羔こを執とりてこれを其その子こダビデの手てによりてサウルにおくれり〘406㌻〙 21 ダビデ、サウルの許もとにいたりて其そのまへに事つかふサウル大おほいにこれを愛あいし其その武器ぶきを執とる者ものとなす 22 サウル人ひとをヱサイにつかはしていひけるはねがはくはダビデをしてわが前󠄃まへに事つかへしめよ彼かれはわが心こゝろにかなへりと
 531㌻ 
23 神かみより出いでたる惡あく鬼きサウルに臨のぞめるときダビデ琴ことを執とり手てをもてこれを彈ひくにサウル慰なぐさみて愈󠄃いえ惡あく鬼きかれをはなる

第17章

1 爰こゝにペリシテ人びと其その軍ぐんを集あつめて戰たゝかはんとしユダに屬ぞくするシヨコにあつまりシヨコとアゼカの間あひだなるバスダミムに陣ぢんをとる 2 サウルとイスラエルの人々ひと〴〵集あつまりてエラの谷たにに陣ぢんをとりペリシテ人びとにむかひて軍いくさの陣列そなへをたつ 3 ペリシテ人びとは此方こなたの山やまにたちイスラエルは彼方かなたの山やまにたつ谷たには其そのあひだにあり 4 時ときにペリシテ人びとの陣ぢんよりガテのゴリアテと名なづくる挑戰たたかひをいどむ者ものいできたる其その身みの長たけ六キユビト半󠄃はん 5 首かうべに銅あかがねの盔かぶとを戴いただき身みに鱗綴うろことぢの鎧甲よろひを着きたり其そのよろひの銅あかがねのおもさは五千せんシケルなり 6 また脛あしには銅あかがねの脛すね當あてを着つけ肩󠄃かたの間あひだに銅あかがねの矛戟ほこを負󠄅おふ 7 其その槍やりの柄えは機はたの梁はりのごとく槍やりの鋒刃󠄃ほの鐵てつは六百ぴやくシケルなり楯たてを執とる者もの其その前󠄃まへにゆく 8 ゴリアテ立たちてイスラエルの諸行伍そなへぞなへによばはり云いひけるは汝なんぢらはなんぞ陣列そなへをなして出いできたるや我われはペリシテ人びとにして汝なんぢらはサウルの臣下しもべにあらずや汝なんぢら一人ひとりをえらみて我わがところにくだせ 9 其人そのひともし我われとたたかひて我われをころすことをえば我われら汝なんぢらの臣僕しもべとならんされど若もし我われかちてこれを殺ころさば汝なんぢら我われらの僕しもべとなりて我われらに事つかふ可べし 10 かくて此このペリシテ人びといひけるは我われ今日こんにちイスラエルの諸行伍そなへぞなへを挑いどむ一人ひとりをいだして我われと戰たゝかはしめよと 11 サウルおよびイスラエルみなペリシテ人びとのこの言ことばを聞きき驚おどろきて大おほいに懼おそれたり

12 抑そも〳〵ダビデはかのベテレヘムユダのエフラタ人びとヱサイとなづくる者ものの子こなり此人このひと八人にんの子こありしがサウルの世よには年邁としすすみてすでに老おいたり 13 ヱサイの長子しやうし三人にんゆきてサウルにしたがひて戰爭いくさにいづ其その戰いくさにいでし三人にんの子この名なは長あにをエリアブといひ次󠄄つぎをアビナダブといひ第だい三をシヤンマといふ 14 ダビデは季子すゑのこにして其その兄あに三人にんはサウルにしたがへり
 532㌻ 
15 ダビデはサウルに往󠄃來ゆききしてベテレヘムにて其その父󠄃ちゝの羊ひつじを牧かふ 16 彼かのペリシテ人びと四十日にちのあひだ朝󠄃夕あさゆふ近󠄃ちかづきて前󠄃まへにたてり

17 時ときにヱサイ其その子こダビデにいひけるは今いま汝なんぢの兄あにのために此この烘麥やきむぎ一斗とと此この十とをのパンを取とりて陣ぢん營えいにをる兄あにのところにいそぎゆけ 18 また此この十とをの乾酪󠄂かんらくをとりて其その千夫せんにんの長かしらにおくり兄あにの安否あんぴを視みて其その返󠄄かへり事ごとをもちきたれと〘407㌻〙 19 サウルと彼等かれらおよびイスラエルの人ひとは皆みなペリシテ人びととたたかひてエラの谷たににありき 20 ダビデ朝󠄃あさ夙はやくおきて羊ひつじをひとりの牧者ぼくしやにあづけヱサイの命めいぜしごとく携たづさへゆきて車くるま營がこひにいたるに軍勢ぐんぜいいでて行伍そなへをなし鯨波ときのこゑをあげたり 21 しかしてイスラエルとペリシテ人びと陣列そなへをたてて行伍そなへを行伍そなへに相あひむかはせたり 22 ダビデ其その荷にをおろして荷にをまもる者ものの手てにわたし行伍そなへの中うちにはせゆきて兄あにの安否あんぴを問とふ 23 ダビデ彼等かれらと俱ともに語かたれる時とき視みよペリシテ人びとの行伍そなへよりガテのペリシテのゴリアテとなづくる彼かの挑戰たたかひをいどむ者もののぼりきたり前󠄃さきのことばのごとく言いひしかばダビデ之これを聞きけり 24 イスラエルの人ひと其人そのひとを見みて皆みな逃󠄄にげて之これをはなれ痛いたく懼おそれたり 25 イスラエルの人ひといひけるは汝なんぢらこののぼり來きたる人ひとを見みしや誠󠄃まことにイスラエルを挑いどまんとて上のぼりきたるなり彼かれをころす人ひとは王わう大おほいなる富とみを以もてこれをとまし其その女子むすめをこれにあたへて其その父󠄃ちゝの家いへにはイスラエルの中うちにて租税そぜいをまぬかれしめん 26 ダビデ其その傍かたはらにたてる人々ひと〴〵にかたりていひけるは此このペリシテ人びとをころしイスラエルの耻辱はぢを雪󠄃すゝぐ人ひとには如何いかなることをなすや此この割󠄅禮かつれいなきペリシテ人びとは誰たれなればか活いける神かみの軍ぐんを搦いどむ 27 民たみまへのごとく答こたへていひけるはかれを殺ころす人ひとには斯かくのごとくせらるべしと

28 兄あにエリアブ、ダビデが人々ひと〴〵とかたるを聞きゝしかばエリアブ、ダビデにむかひて怒いかりを發はつしいひけるは汝なんぢなにのために此こゝに下くだりしや彼かの野のにあるわづかの羊ひつじを誰たれにあづけしや我われ汝なんぢの傲慢ほこりと惡あしき心こゝろを知しる其そは汝なんぢ戰爭いくさを見みんとて下くだればなり
 533㌻ 
29 ダビデいひけるは我われ今いまなにをなしたるや只たゞ一言ひとことにあらずやと 30 又󠄂またふりむきて他ほかの人ひとにむかひ前󠄃まへのごとく語かたれるに民たみまへのごとく答こたへたり

31 人々ひと〴〵ダビデが語かたれる言ことばをききてこれをサウルのまへにつげければサウルかれを召めす 32 ダビデ、サウルにいひけるは人々ひと〴〵かれがために氣きをおとすべからず僕しもべゆきてかのペリシテ人びととたたかはん 33 サウル、ダビデにいひけるは汝なんぢはかのペリシテ人びとをむかへてたたかふに勝󠄃たへず其そは汝なんぢは少年わかきものなるにかれは若わかき時ときよりの戰いくさ士びとなればなり 34 ダビデ、サウルにいひけるは僕しもべさきに父󠄃ちゝの羊ひつじを牧かへるに獅子しゝと熊くまと來きたりて其その群むれの羔つつがを取とりたれば 35 其その後あとをおひて之これを搏うち羔こひつじを其その口くちより援󠄃すくひいだせりしかして其その獸けもの我われに猛たけりかかりたれば其その鬚ひげをとらへてこれを擊うちころせり 36 僕しもべは旣󠄁すでに獅子しゝと熊くまとを殺ころせり此この割󠄅禮かつれいなきペリシテ人びと活いける神かみの軍ぐんをいどみたれば亦またかの獸けものの一ひとつのごとくなるべし〘408㌻〙 37 ダビデまたいひけるはヱホバ我われを獅子しゝの爪つめと熊くまの爪つめより援󠄃すくひいだしたまひたれば此このペリシテ人びとの手てよりも援󠄃すくひいだしたまはんとサウル、ダビデにいふ往󠄃ゆけねがはくはヱホバ汝なんぢとともにいませ 38 是こゝにおいてサウルおのれの戎󠄂いくさ衣ごろもをダビデに衣きせ銅あかがねの盔かぶとを其その首かうべにかむらせ亦また鱗綴うろことぢの鎧よろひをこれにきせたり 39 ダビデ戎󠄂いくさ衣ごろものうへに劍かたなを佩おびて往󠄃ゆかんことを試こゝろむ未いまだ驗ためせしことなければなりしかしてダビデ、サウルにいひけるは我われいまだ驗ためせしことなければ是これを衣きては往󠄃ゆくあたはずと 40 ダビデこれを脱ぬぎすて手てに杖つゑをとり谿間たにまより五いつつの光滑なめらかなる石いしを拾ひろひて之これを其その持もてる牧羊者ひつじかひの具󠄄ぐなる袋ふくろに容いれ手てに投石索いしなげを執とりて彼かのペリシテ人びとにちかづく

41 ペリシテ人びと進󠄃すゝみきてダビデに近󠄃ちかづけり楯たてを執とるもの其そのまへにあり
 534㌻ 
42 ペリシテ人びと環󠄃視みまはしてダビデを見みて之これを藐視あなどる其そは少わかくして赤あかくまた美うるはしき貌かたちなればなり 43 ペリシテ人びとダビデにいひけるは汝なんぢ杖つゑを持もちてきたる我われ豈あに犬いぬならんやとペリシテ人びと其その神かみの名なをもってダビデを呪詛のろふ 44 しかしてペリシテ人びとダビデにいひけるは我わがもとに來きたれ汝なんぢの肉󠄁にくを空󠄃そらの鳥とりと野のの獸けものにあたへんと 45 ダビデ、ペリシテ人びとにいひけるは汝なんぢは劍かたなと槍やりと矛戟ほこをもて我われにきたる然されど我われは萬軍ばんぐんのヱホバの名なすなはち汝なんぢが搦いどみたるイスラエルの軍ぐんの神かみの名なをもて汝なんぢにゆく 46 今日けふヱホバ汝なんぢをわが手てに付わたしたまはんわれ汝なんぢをうちて汝なんぢの首級くびを取とりペリシテ人びとの軍勢ぐんぜいの尸體しかばねを今日けふ空󠄃そらの鳥とりと地ちの野の獸けものにあたへて全󠄃地ぜんちをしてイスラエルに神かみあることをしらしめん 47 且かつ又󠄂またこの群衆ぐんしうみなヱホバは救すくふに劍かたなと槍やりを用もちひたまはざることをしるにいたらん其そは戰たゝかひはヱホバによれば汝なんぢらを我われらの手てにわたしたまはんと 48 ペリシテ人びとすなはち立たちあがり進󠄃すゝみちかづきてダビデをむかへしかばダビデいそぎ陣ぢんにはせゆきてペリシテ人びとをむかふ 49 ダビデ手てを嚢ふくろにいれて其その中うちより一つの石いしをとり投なげてペリシテ人びとの顙ひたひを擊うちければ石いし其その顙ひたひに突つきいりて俯伏うちぶせに地ちにたふれたり

50 かくダビデ投石索いしなげと石いしをもてペリシテ人びとにかちペリシテ人びとをうちて之これをころせり然されどダビデの手てには劍かたななかりしかば 51 ダビデはしりてペリシテ人びとの上うへにのり其その劍かたなを取とりて之これを鞘さやより拔ぬきはなしこれをもて彼かれをころし其その首級くびを斬きりたり爰こゝにペリシテの人々ひと〴〵其その勇󠄃士ゆうしの死しぬるを見みてにげしかば 52 イスラエルとユダの人ひとおこり喊呼ときをあげてペリシテ人びとをおひガテの入いり口くちおよびエクロンの門もんにいたるペリシテ人びとの負󠄅傷人ておひシヤライムの路みちに仆たふれてガテおよびエクロンにおよぶ〘409㌻〙 53 イスラエルの子孫ひと〴〵ペリシテ人びとをおふてかへり其その陣ぢんを掠かすむ 54 ダビデかのペリシテ人びとの首くびを取とりて之これをエルサレムにたづさへきたりしが其その甲冑かつちうはおのれの天てん幕まくにおけり

55 サウル、ダビデがペリシテ人びとにむかひて出いづるを見みて軍長ぐんのかしらアブネルにいひけるはアブネル此この少者わかきものはたれの子こなるやアブネルいひけるは王わう汝なんぢの靈魂たましひは生いくわれしらざるなり
 535㌻ 
56 王わういひけるはこの少年せうねんはたれの子こなるかを尋󠄃たづねよ 57 ダビデかのペリシテ人びとを殺ころしてかへれる時ときアブネルこれをひきて其そのペリシテ人びとの首級くびを手てにもてるままサウルのまへにつれゆきければ 58 サウルかれにいひけるは若わかき人ひとよ汝なんぢはたれの子こなるやダビデこたへけるは汝なんぢの僕しもべベテレヘム人びとヱサイの子こなり

第18章

1 ダビデ、サウルにかたることを終󠄃をへしときヨナタンの心こゝろダビデの心こゝろにむすびつきてヨナタンおのれの命いのちのごとくダビデを愛あいせり 2 此この日ひサウル、ダビデをかかへて父󠄃ちゝの家いへにかへらしめず 3 ヨナタンおのれの命いのちのごとくダビデを愛あいせしかばヨナタンとダビデ契󠄅約けいやくをむすべり 4 ヨナタンおのれの衣きたる明衣うはぎを脱ぬぎてダビデにあたふ其その戎󠄂衣いくさごろもおよび其その刀かたなも弓ゆみも帶おびもまたしかせり 5 ダビデは凡すべてサウルが遣󠄃つかはすところにいでゆきて功こうをあらはしければサウルかれを兵隊󠄄つはものの長かしらとなせりしかしてダビデ民たみの心こゝろにかなひ又󠄂またサウルの僕しもべの心こゝろにもかなふ

6 衆人ひと〴〵かへりきたれる時ときすなはちダビデ、ペリシテ人びとをころして還󠄃かへれる時とき婦󠄃女をんなイスラエルの邑々まち〳〵よりいできたり鼗つづみと祝いはひ歌うたと磬けいをもちて歌うたひまひつつサウル王わうを迎󠄃むかふ 7 婦󠄃人をんな踴躍󠄃をどりつつ相あひこたへて歌うたひけるはサウルは千せんをうち殺ころしダビデは萬まんをうちころすと 8 サウル甚はなはだ怒いかりこの言ことばをよろこばずしていひけるは萬まんをダビデに歸きし千せんをわれに歸きす此この上うへかれにあたふべき者ものは唯たゞ國くにのみと 9 サウルこの日ひより後のちダビデを目めがけたり

10 次󠄄つぎの日ひ神かみより出いでたる惡あく鬼きサウルにのぞみてサウル家いへのなかにて預言よげんしたりしかばダビデ故もとのごとく手てをもつて琴ことをひけり時ときにサウルの手てに投なげ槍やりありければ 11 サウル我われダビデを壁かべに刺さしとほさんといひて其その投なげ槍やりをさしあげしがダビデ二度ふたゝび身みをかはしてサウルをさけたり
 536㌻ 
12 ヱホバ、サウルをはなれてダビデと共ともにいますによりてサウル彼かれをおそれたり〘410㌻〙 13 是故このゆえにサウル彼かれを遠󠄄とほざけて千夫せんにんの長かしらとなせりダビデすなはち民たみのまへに出で入いりす 14 またダビデすべて其そのゆくところにて功こうをあらはし且かつヱホバかれとともにいませり 15 サウル、ダビデが大おほいに功こうをあらはすをみてこれを恐おそれたり 16 しかれどもイスラエルとユダの人ひとはみなダビデを愛あいせり彼かれが其その前󠄃まへに出で入いりするによりてなり

17 サウル、ダビデにいひけるはわれわが長女あねむすめメラブを汝なんぢに妻めあはさん汝なんぢただわがために勇󠄃いさみヱホバの軍いくさに戰たゝかふべしと其そはサウルわが手てにてかれを殺ころさでペリシテ人びとの手てにてころさんとおもひたればなり 18 ダビデ、サウルにいひけるは我われは誰たれぞわが命いのちはなんぞわが父󠄃ちゝの家いへはイスラエルにおいて何いかなる者ものぞや我われいかでか王わうの婿むことなるべけんと 19 然しかるにサウルの女子むすめメラブはダビデに嫁とつぐべき時ときにおよびてメホラ人びとアデリエルに妻めあはされたり 20 サウルの女むすめミカル、ダビデを愛あいす人ひとこれを王わうに吿つげければサウル其その事ことを善よしとせり 21 サウルいひけるは我われミカルをかれにあたへて彼かれを謀はかる手段てだてとなしペリシテ人びとの手てにてかれを殺ころさんといひてサウル、ダビデにいひけるは汝なんぢ今日こんにちふたゝびわが婿むことなるべし

22 かくてサウル其その僕しもべに命めいじけるは汝なんぢら密ひそかにダビデにかたりて言いへ視みよ王わう汝なんぢを悅よろこび王わうの僕しもべみな汝なんぢを愛あいすされば汝なんぢ王わうの婿むことなるべしと 23 サウルの僕しもべ此この言ことばをダビデの耳みゝに語かたりしかばダビデいひけるは王わうの婿むことなること汝なんぢらの目めには易やすき事こととみゆるや且かつわれは貧󠄃まづしく賤いやしき者ものなりと 24 サウルの僕しもべサウルにつげてダビデ是かくの如ごとくかたれりといへり
 537㌻ 
25 サウルいひけるはなんぢらかくダビデにいへ王わうは聘禮おくりものを望󠄇のぞまずただペリシテ人びとの陽まへの皮かは一百ひやくをえて王わうの仇あだをむくいんことを望󠄇のぞむと是こはサウル、ダビデをペリシテ人びとの手てに殞沒たふれしめんとおもへるなり 26 サウルの僕しもべ此この言ことばをダビデにつげしかばダビデは王わうの婿むことなることを善よしとせり斯かくて其時そのときいまだ滿みたざるあひだに 27 ダビデ起󠄃たちて其その從者じふしやとともにゆきペリシテ人びと二百人にんをころして其その陽まへの皮かはをたづさへきたり之これを悉こと〴〵く王わうにささげて王わうの婿むことならんとすサウル乃すなはち其その女むすめミカルをダビデに妻めあはせたり 28 サウル見みてヱホバのダビデとともにいますを知しりぬまたサウルの女むすめミカルはダビデを愛あいせり 29 サウルさらにますますダビデを恐おそれサウル一生いつしやうのあひだダビデの敵てきとなれり

30 爰こゝにペリシテ人びとの諸伯きみたち攻せめきたりしがダビデかれらが攻せめきたるごとにサウルの諸もろ〳〵の臣僕しもべよりは多おほくの功こうをたてしかば其その名なはなはだ尊󠄅たふとまる〘411㌻〙

第19章

1 サウル其その子こヨナタンおよび諸もろ〳〵の臣僕しもべにダビデをころさんとすることを語かたれり 2 されどサウルの子こヨナタン深ふかくダビデを愛あいせしかばヨナタン、ダビデにつげていひけるはわが父󠄃ちゝサウル汝なんぢをころさんことを求もとむこのゆゑに今いまねがはくは汝なんぢ翌󠄃朝󠄃あくるあさ謹恪つつしんで潜ひそみをりて身みを隱かくせ 3 我われいでゆきて汝なんぢがをる野のにてわが父󠄃ちゝの傍かたはらにたちわが父󠄃ちゝとともに汝なんぢの事ことを談かたらはんしかして我われ其その事ことの如何いかなるを見みて汝なんぢに吿つぐべし 4 ヨナタン其その父󠄃ちゝサウルに向むかひダビデを褒揚ほめていひけるは願ねがはくは王わう其その僕しもべダビデにむかひて罪つみををかすなかれ彼かれは汝なんぢに罪つみををかさずまた彼かれが汝なんぢになす行爲わざははなはだ善よし 5 またかれは生命いのちをかけてかのペリシテ人びとをころしたりしかしてヱホバ、イスラエルの人々ひと〴〵のためにおほいなる救すくひをほどこしたまふ汝なんぢ見みてよろこべりしかるに何なんぞゆゑなくしてダビデをころし無辜者つみなきものの血ちをながして罪つみををかさんとするや
 538㌻ 
6 サウル、ヨナタンの言ことばを聽きゝいれサウル誓ちかひけるはヱホバはいくわれかならずかれをころさじ 7 ヨナタン、ダビデをよびてヨナタン其その事ことをみなダビデにつげ遂󠄅つひにダビデをサウルの許もとにつれきたりければダビデさきのごとくサウルの前󠄃まへにをる

8 爰こゝに再ふたゝび戰爭いくさおこりぬダビデすなはちいでてペリシテ人びととたたかひ大おほいにかれらを殺ころせしかばかれら其そのまへを逃󠄄にげされり 9 サウル手てに投なげ槍やりを執とりて室いへに坐ざする時ときヱホバより出いでたる惡あく鬼きこれにのりうつれり其時そのときダビデ乃すなはち手てをもて琴ことを彈ひく 10 サウル投なげ槍やりをもてダビデを壁かべに刺さしとほさんとしたりしがダビデ、サウルのまへを避󠄃さけければ投なげ槍やりを壁かべに衝つきたてたりダビデ其その夜よ逃󠄄にげさりぬ 11 サウル使󠄃者つかひをダビデの家いへにつかはしてかれを守まもらしめ朝󠄃あさにおよびてかれをころさしめんとすダビデの妻つまミカル、ダビデにつげていひけるは若もし今夜こんや爾なんぢの命いのちを援󠄃すくはずば明あくる朝󠄃あさ汝なんぢは殺ころされんと 12 ミカル即すなはち牖まどよりダビデを縋つりおろしければ往󠄃ゆきて逃󠄄のがれされり 13 斯かくてミカル像󠄃ざうをとりて其その牀とこに置おき山羊やぎの毛けの編󠄃物あみものを其その頭あたまにおき衣服󠄃ころもをもて之これをおほへり 14 サウル、ダビデを執とらふる使󠄃者つかひをつかはしければミカルいふかれは疾やまひありと 15 サウル使󠄃者つかひをつかはしダビデを見みさせんとていひけるはかれを牀とこのまま我われにたづさきたれ我われこれをころさん 16 使󠄃者つかひいりて見みたるに牀とこには像󠄃ぞうありて其その頭あたまに山羊やぎの毛けの編󠄃物あみものありき 17 サウル、ミカルにいひけるはなんぞかく我われをあざむきてわが敵てきを逃󠄄にがしやりしやミカル、サウルにこたへけるは彼かれ我われにいへり我われをはなちてさらしめよ然しからずば我われ汝なんぢをころさんと〘412㌻〙

18 ダビデにげさりてラマにゆきサムエルの許もとにいたりてサウルがおのれになせしことをことごとくつげたりしかしてダビデとサムエルはゆきてナヨテにすめり 19 サウルに吿つぐる者ものありていふ視みよダビデはラマのナヨテにをると
 539㌻ 
20 サウル乃すなはちダビデを執とらふる使󠄃者つかひをつかはせしが彼等かれら預言者よげんしやの一群くみの預言よげんしをりてサムエルが其その中うちの長かしらとなりて立たてるを見みるにおよび神かみの靈みたまサウルの使󠄃者つかひにのぞみて彼等かれらもまた預言よげんせり 21 人々ひと〴〵これを吿つぐければサウル他ほかの使󠄃者つかひを遣󠄃つかはしけるにかれらも亦また預言よげんせしかばサウルまた三度みたび使󠄃者つかひを遣󠄃つかはしけるが彼等かれらもまた預言よげんせり 22 是こゝにおいてサウルもまたラマにゆきけるがセクの大おほ井ゐどにいたれる時とき問とふていひけるはサムエルとダビデは何處いづくにをるや答こたへていふラマのナヨテにをる 23 サウルかしこにゆきてラマのナヨテに至いたりけるに神かみの靈みたままた彼かれにのぞみて彼かれラマのナヨテにいたるまで步あるきつつ預言よげんせり 24 彼かれもまた其その衣服󠄃ころもをぬぎすて同おなじくサムエルのまへに預言よげんし其その一日いちにち一夜いちや裸體はだかにて仆たふれ臥ふしたり是故このゆえに人々ひと〴〵サウルもまた預言者よげんしやのうちにあるかといふ

第20章

1 ダビデ、ラマのナヨテより逃󠄄にげきたりてヨナタンにいひけるは我われ何なにをなし何なにのあしき事ことあり汝なんぢの父󠄃ちゝのまへに何なにの罪つみを得えてか彼かれわが命いのちを求もとむる 2 ヨナタンかれにいひけるは汝なんぢ決きはめて殺ころさるることあらじ視みよわが父󠄃ちゝは事ことの大おほいなるも小ちひさなるも我われにつげずしてなすことなしわが父󠄃ちゝなんぞこの事ことを我われにかくさんやこの事ことしからず 3 ダビデまた誓ちかひていひけるは汝なんぢの父󠄃ちゝ必かならずわが汝なんぢのまへに恩惠めぐみをうるを知しる是こゝをもてかれ思おもへらく恐おそらくはヨナタン悲かなしむべければこの事ことをかれにしらしむべからずとしかれどもヱホバはいくまたなんぢの靈魂たましひはいくわれは死しをさること只たゞ一步ひとあしのみ 4 ヨナタン、ダビデにいひけるはなんぢの心こゝろなにをねがふか我われ爾なんぢのために之これをなさんと 5 ダビデ、ヨナタンにいひけるは明日あすは月󠄃朔ついたちなれば我われ王わうとともに食󠄃しよくにつかざるべからず然しかれども我われをゆるして去さらしめ三日みつかの晩よひまで野のに隱かくるることをえさしめよ 6 若もし汝なんぢの父󠄃ちゝまことに我われをもとめなば其時そのとき言いへダビデ切せつに其その邑まちベテレヘムにはせゆかんことを我われに請󠄃こへり其そは彼處かしこに全󠄃家ぜんかの歳とし祭まつりあればなりと 7 彼かれもし善よしといはば僕しもべやすからんされど彼かれもし甚はばはだしく怒いからば彼かれの害󠄅がいをくはへんと決さだめしを知しれ〘413㌻〙
 540㌻ 
8 汝なんぢヱホバのまへに僕しもべと契󠄅約けいやくをむすびたれば願ねがはくは僕しもべに恩めぐみをほどこせ然されど若もし我われに惡あしき事ことあらば汝なんぢ自みづから我われをころせ何なんぞ我われを汝なんぢの父󠄃ちゝに引ひきゆくべけんや 9 ヨナタンいひけるは斯かゝる事ことかならず汝なんぢにあらざれ我われわが父󠄃ちゝの害󠄅がいを汝なんぢにくはへんと決きはむるをしらば必かならず之これを汝なんぢにつげん 10 ダビデ、ヨナタンにいひけるは若もし汝なんぢの父󠄃ちゝ荒々あら〳〵しく汝なんぢにこたふる時ときは誰たれか其その事ことを我われに吿つぐべきや 11 ヨナタン、ダビデにいひけるは來きたれ我われら野のにいでゆかんと俱ともに野のにいでゆけり

12 しかしてヨナタン、ダビデにいひけるはイスラエルの神かみヱホバよ明日あすか明後日あさての今いまごろ我われわが父󠄃ちゝを窺うかゞひて事ことのダビデのために善よきを見みながら人ひとを汝なんぢに遣󠄃つかはして吿つげしらさずばヱホバ、ヨナタンに斯かくなしまた重かさねて斯かくくなしたまへ 13 されど若もしわが父󠄃ちゝ汝なんぢに害󠄅がいをくはへんと欲ほつせば我われこれを吿つげしらせて汝なんぢをにがし汝なんぢを安やすらかにさらしめん願ねがはくはヱホバわが父󠄃ちゝとともに坐いませしごとく汝なんぢとともにいませ 14 汝なんぢ只たゞわが生いけるあひだヱホバの恩めぐみを我われにしめして死しなざらしむるのみならず 15 ヱホバがダビデの敵てきを悉こと〴〵く地ちの表おもてより絕たちさりたまふ時ときにもまた汝なんぢわが家いへを永ながく汝なんぢの恩めぐみにはなれしむるなかれ 16 かくヨナタン、ダビデの家いへと契󠄅約けいやくをむすぶヱホバ之これに關つきてダビデの敵てきを討たゞしたまへり

17 しかしてヨナタンふたゝびダビデに誓ちかはしむかれを愛あいすればなり即すなはちおのれの生命いのちを愛あいするごとく彼かれを愛あいせり 18 またヨナタン、ダビデにいひけるは明日あすは月󠄃朔ついたちなるが汝なんぢの座ざ空󠄃むなしかるべければ汝なんぢ求もとめらるべし 19 汝なんぢ三日みつかとゞまりて速󠄃すみやかに下くだり嘗かつてかの事ことの日ひに隱かくれたるところに至いたりてエゼルの石いしの傍かたはらに居をるべし 20 我われ的まとを射󠄂いるごとくして其その石いしの側そばに三本みすぢの矢やをはなたん 21 しかしてゆきて矢やをたづねよといひて僮子わらべをつかはすべし我われもし故ことさらに僮子わらべに視みよ矢やは汝なんぢの此旁こなたにあり其それを取とれと曰いはばなんぢきたるべしヱホバは生いく汝なんぢ安やすくして何なにもなかるべければなり
 541㌻ 
22 されど若もし我われ少年せうねんに視みよ矢やは汝なんぢの彼旁さきにありといはば汝なんぢさるべしヱホバ汝なんぢをさらしめたまふなり 23 汝なんぢと我われとかたれることについては願ねがはくはヱホバ恒つねに汝なんぢと我われとの間あひだにいませと

24 ダビデ即すなはち野のにかくれぬ偖さて月󠄃朔ついたちになりければ王わう坐ざして食󠄃しよくに就つく 25 即すなはち王わうは常つねのごとく壁かべによりて座ざを占しむヨナタン立たちあがりアブネル、サウルの側そばに坐ざすダビデの座ざはなむし 26 されど其その日ひにはサウル何なにをも曰いはざりき其そは何事なにごとか彼かれにおこりしならん彼かれきよからず定さだめて潔󠄄きよからずと思おもひたればなり〘414㌻〙 27 明日あくるひすなはち月󠄃つきの二日ふつかにおよびてダビデの座ざなほ虛むなしサウル其その子こヨナタンにいひけるは何なにゆゑにヱサイの子こは昨日きのふも今日けふも食󠄃しよくに來きたらざるや 28 ヨナタン、サウルにこたへけるはダビデ切せつにベテレヘムにゆかんことを我われにこひて曰いひけるは 29 ねがはくは我われをゆるしてゆかしめよわが家いへ邑まちにて祭まつりをなすによりわが兄あに我われにきたることを命めいぜり故ゆゑに我われもし汝なんぢのまへにめぐみをえたるならばねがはくは我われをゆるして去さらしめ兄弟きやうだいをみることを得えさしめよと是故このゆえにかれは王わうの席せきに來きたらざるなり

30 サウル、ヨナタンにむかひて怒いかりを發いだしかれにいひけるは汝なんぢは曲まがり且かつ悖もとれる婦󠄃をんなの子こなり我われあに汝なんぢがヱサイの子こを簡えらみて汝なんぢの身みをはづかしめまた汝なんぢの母はゝの膚はだへを辱はづかしむることを知しらざらんや 31 ヱサイの子この此この世よにながらふるあひだは汝なんぢと汝なんぢの位くらゐ固かたくたつを得えず是故このゆえに今いま人ひとをつかはして彼かれをわが許もとに引ひききたれ彼かれは死しぬべき者ものなり 32 ヨナタン父󠄃ちゝサウルに對こたへていひけるは彼かれなにによりて殺ころさるべきか何なにをなしたるやと 33 ここにおいてサウル、ヨナタンを擊うたんとて投なげ槍やりをさしあげたりヨナタンすなはち其その父󠄃ちゝのダビデを殺ころさんと決きはめしをしれり 34 かくてヨナタン烈はげしく怒いかりて席せきを立たち月󠄃つきの二日ふつかには食󠄃しよくをなさざりき其そは其その父󠄃ちゝのダビデをはづかしめしによりてダビデのために憂うれへたればなり
 542㌻ 

35 翌󠄃朝󠄃つぐあさヨナタン一ひとりの小こ童子わらべを從したがヘダビデと約やくせし時刻󠄂じこくに野のにいでゆき 36 童わらべにいひけるは走はしりて我わがはなつ矢やをたづねよと童子わらべはしる時ときヨナタン矢やを彼かれのさきに發はなてり 37 童子わらべがヨナタンの發はなちたる矢やのところにいたれる時ときヨナタン童子わらべのうしろに呼よばはりていふ矢やは汝なんぢのさきにあるにあらずや 38 ヨナタンまた童子わらべのうしろによばはりていひけるは速󠄃すみやかにせよ急󠄃いそげ止とゞまるなかれとヨナタンの童子わらべ矢やをひろひあつめて其その主人あるじのもとにかへる 39 されど童子わらべは何なにをも知しらざりき只たゞヨナタンとダビデ其その事ことをしりたるのみ 40 かくてヨナタン其その武器ぶきを童子わらべに授わたしていひけるは往󠄃ゆけこれを邑まちに携たづさへよと 41 童子わらべすなはち往󠄃ゆけり時ときにダビデ石いしの傍かたはらより立たちあがり地ちにふして三たび拜はいせりしかしてふたり互たがひに接吻くちつけしてたがひに哭なくダビデ殊ことにはなはだし 42 ヨナタン、ダビデにいひけるは安やすんじて往󠄃ゆけ我われら二人ふたりともにヱホバの名なに誓ちかひて願ねがはくはヱホバ恒つねに我われと汝なんぢのあひだに坐いまし我わが子孫しそんと汝なんぢの子孫しそんのあひだにいませといへりとダビデすなはちたちて去さるヨナタン邑まちにいりぬ〘415㌻〙

第21章

1 ダビデ、ノブにゆきて祭司さいしアヒメレクにいたるアヒメレク懼おそれてダビデを迎󠄃むかへこれにいひけるは汝なんぢなんぞ獨ひとりにして誰たれも汝なんぢとともならざるや 2 ダビデ祭司さいしアヒメレクにいふ王わう我われに一ひとつの事ことを命めいじて我われにいふ我わが汝なんぢを遣󠄃つかはすところの事ことおよびわが汝なんぢに命めいじたる所󠄃ところについては何なにをも人ひとにしらするなかれと我われ某それの處ところに我わが少者わかものを出いだしおけり 3 いま何なにか汝なんぢの手てにあるや我わが手てに五いつつのパンか或あるひはなににてもある所󠄃ところを與あたへよ 4 祭司さいしダビデに對こたへていひけるは常つねのパンはわが手てになしされど若もし少者わかきもの婦󠄃女をんなをだに愼つゝしみてありしならば聖󠄃きよきパンあるなりと 5 ダビデ祭司さいしに對こたへていひけるは實まことにわがいでしより此これ三日みつかは婦󠄃女をんなわれらにちかづかず且かつ少者わかきもの等らの器うつはは潔󠄄きよし又󠄂またパンは常つねの物もののごとし今日こんにち器うつはに潔󠄄きよきパンあれば殊ことに然しかりと 6 祭司さいしかれに聖󠄃きよきパンを與あたへたり其そはかしこに供前󠄃そなへのパンの外ほかはパン无なかりければなり即すなはち其そのパンは下さげる日ひに熱あつきパンをささげんとて之これをヱホバのまへより取とりされるなり
 543㌻ 

7 其その日ひかしこにサウルの僕しもべ一人ひとり留とどめられてヱホバのまへにあり其その名なをドエグといふエドミ人びとにしてサウルの牧者ぼくしやの長かしらなり 8 ダビデまたアヒメレクにいふ此こゝに汝なんぢの手てに槍やりか劍かたなあらぬか王わうの事こと急󠄃きふなるによりて我われは刀かたなも武器ぶきも携たづさへざりしと 9 祭司さいしいひけるは汝なんぢがエラの谷たににて殺ころしたるペリシテ人びとゴリアテの劍かたな布ぬのに裏つゝみてエポデの後うしろにあり汝なんぢもし之これをとらんとおもはば取とれ此こゝにはほかの劍かたななしダビデいひけるはそれにまさるものなし我われにあたへよと

10 ダビデ其その日ひサウルをおそれて立たちてガテの王わうアキシのところに逃󠄄にげゆきぬ 11 アキシの臣僕しもべアキシに曰いひけるは此これは其その地ちの王わうダビデにあらずや人々ひと〴〵舞踏をどりのうちにこの人ひとのことを歌うたひあひてサウルは千せんをうちころしダビデは萬まんをうちころすといひしにあらずや 12 ダビデこの言ことばを心こゝろに藏をさめ深ふかくガテの王わうアキシをおそれ 13 人々ひと〴〵のまへに佯いつはりて其その氣きを變へんじ執とらはれて狂きやう人じんのさまをなし門もんの扉󠄆とびらに書ものかき其その涎沫よだれを鬚ひげにながれくだらしむ 14 アキシ僕しもべに云いひけるは汝なんぢらの見みるごとく此人このひとは狂きやう人じんなり何なんぞかれを我われにひき來きたるや 15 我われなんぞ狂きやう人じんを須もちひんや汝なんぢら此この者ものを引ひききたりてわがまへに狂くるはしめんとするや此この者ものなんぞ吾わが家いへにいるべけんや〘416㌻〙

第22章

1 是故このゆえにダビデ其處そこをいでたちてアドラムの洞穴󠄄ほらあなにのがる其その兄弟きやうだいおよび父󠄃ちゝの家いへみな聞ききおよびて彼處かしこにくだり彼かれの許もとに至いたる 2 また惱なやめる人ひと負󠄅債おひめある者もの心こゝろに嫌󠄃あきたらぬ者もの皆みなかれの許もとにあつまりて彼かれ其その長かしらとなれりかれとともにある者ものはおよそ四百ひやく人にんなり

3 ダビデ其處そこよりモアブのミヅパにいたりモアブの王わうにいひけるは神かみの我われをいかがなしたまふかを知しるまでねがはくはわが父󠄃母ちちははをして出いでて汝なんぢらとともにをらしめよと
 544㌻ 
4 遂󠄅つひにかれらをモアブの王わうのまへにつれきたるかれらはダビデが要󠄃害󠄅えうがいにをる間あひだ王わうとともにありき 5 預言者よげんしやガデ、ダビデに云いひけるは要󠄃害󠄅えうがいに住󠄃とゞまるなかれゆきてユダの地ちにいたれとダビデゆきてハレテの叢林もりにいたる

6 爰こゝにサウル、ダビデおよびかれとともなる人々ひと〴〵の見み露あらはされしを聞きけり時ときにサウルはギベアにあり手てに槍やりを執とりて岡巒をかの柳やなぎの樹きの下もとにをり臣僕けらいども皆みな其その傍かたはらにたてり 7 サウル側そばにたてる僕けらいにいひけるは汝なんぢらベニヤミン人びと聞きけよヱサイの子こ汝なんぢらおのおのに田はたけと葡萄園ぶだうばたけをあたへ汝なんぢらおのおのを千夫せんにんの長かしら百夫ひやくにんの長かしらとなすことあらんや 8 汝なんぢら皆みな我われに敵てきして謀はかり一人ひとりもわが子このヱサイの子こと契󠄅約けいやくを結むすびしを我われにつげしらする者ものなしまた汝なんぢら一人ひとりもわがために憂うれへずわが子こが今日けふのごとくわが僕しもべをはげまして道󠄃みちに伏ふして我われをおそはしめんとするを我われにつげしらす者ものなし 9 時ときにエドミ人びとドエグ、サウルの僕けらいの中うちにたち居をりしが答こたへていひけるは我われヱサイの子このノブにゆきてアヒトブの子こアヒメレクに至いたるを見みしが 10 アヒメレクかれのためにヱホバに問とひまたかれに食󠄃物しよくもつをあたへペリシテ人びとゴリアテの劍かたなをあたへたりと

11 王わうすなはち人ひとをつかはしてアヒトブの子こ祭司さいしアヒメレクなよびその父󠄃ちゝの家いへすなはちノブの祭司さいしたる人々ひと〴〵を召めしたればみな王わうの許もとにきたる 12 サウルいひけるは汝なんぢアヒトブの子こ聽きけよ答こたへけるは主しゆよ我われここにあり 13 サウルかれにいふ汝なんぢなんぞヱサイの子ことともに我われに敵てきして謀はかり汝なんぢかれにパンと劍かたなをあたへ彼かれが爲ために神かみに問とひかれをして今日けふのごとく道󠄃みちに伏ふして我われをおそはしめんとするや 14 アヒメレク王わうにこたへていひけるは汝なんぢの臣僕しもべのうち誰たれかダビデのごとく忠義ちゆうぎなる彼かれは王わうの婿むこにして親したしく汝なんぢに見まみゆるもの汝なんぢの家いへに尊󠄅たふとまるる者ものにあらずや 15 我われ其時そのときかれのために神かみに問とふことを始はじめしや決きはめてしからずねがはくは王わう僕しもべおよびわが父󠄃ちゝの全󠄃家ぜんかに何なにをも歸きするなかれ其そは僕しもべこの事ことについては多少たせうをいはず何なにをもしらざればなり〘417㌻〙
 545㌻ 
16 王わういひけるはアヒメレク汝なんぢ必かならず死しぬべし汝なんぢの父󠄃ちゝの全󠄃家ぜんかもしかりと 17 王わう旁かたはらにたてる前󠄃驅さきばしりの人々ひと〴〵にいひけるは身みをひるがへしてヱホバの祭司さいしを殺ころせかれらもダビデと力ちからを合あはするが故ゆゑまたかれらダビデの逃󠄄にげたるをしりて我われに吿つげざりし故ゆゑなりと然されど王わうの僕けらい手てをいだしてヱホバの祭司さいしを擊うつことを好このまざれば 18 王わうドエグにいふ汝なんぢ身みをひるがへして祭司さいしをころせとエドミ人びとドエグ乃すなはち身みをひるがへして祭司さいしをうち其その日ひ布ぬののエポデを衣きたる者もの八十五人にんをころせり 19 かれまた刃󠄃やいばを以もて祭司さいしの邑まちノブを擊うち刃󠄃やいばをもて男をとこ女をんな童稚こども嬰孩ちのみご牛うし驢馬ろば羊ひつじを殺ころせり

20 アヒトブの子こアヒメレクの一人ひとりの子こアビヤタルとなづくる者もの逃󠄄のがれてダビデにはしり從したがふ 21 アビヤタル、サウルがヱホバの祭司さいしを殺ころしたることをダビデに吿つげしかば 22 ダビデ、アビヤタルにいふかの日ひエドミ人びとドエグ彼處かしこにをりしかば我われかれが必かならずサウルにつげんことを知しれり我われ汝なんぢの父󠄃ちゝの家いへの人々ひと〴〵の生命いのちを喪うしなへる源由もととなれり 23 汝なんぢ我われとともに居をれ懼おそるるなかれわが生命いのちを求もとむる者もの汝なんぢの生命いのちをも求もとむるなり汝なんぢ我われとともにあらば安全󠄃あんぜんなるべし

第23章

1 人々ひと〴〵ダビデにつげていひけるは視みよペリシテ人びとケイラを攻せめ穀場うちばを掠かすむと 2 ダビデ、ヱホバに問とふていひけるは我われゆきて是このペリシテ人びとを擊うつべきかとヱホバ、ダビデにいひたまひけるは往󠄃ゆきてペリシテ人びとをうちてケイラを救すくヘ 3 ダビデの從者じふしやかれにいひけるは視みよわれら此こゝにユダにあるすら尙なほおそる况いはんやケイラにゆきてペリシテ人びとの軍ぐんにあたるをやと 4 ダビデふたゝびヱホバに問とひけるにヱホバ答こたへていひたまひけるは起󠄃たちてケイラにくだれ我われペリシテ人びとを汝なんぢの手てにわたすべし
 546㌻ 
5 ダビデとその從者じふしやケイラにゆきてペリシテ人びととたたかひ彼かれらの家畜かちくを奪うばひとり大おほいにかれらをうちころせりかくダビデ、ケイラの居民ひと〴〵をすくふ 6 アヒメレクの子こアビヤタル、ケイラにのがれてダビデにいたれる時とき其その手てにエポデを執とりてくだれり

7 爰こゝにダビデのケイラに至いたれる事ことサウルに聞きこえければサウルいふ神かみかれを我わが手てにわたしたまへり其そはかれ門もんあり關くわんある邑まちにいりたれば閉とぢこめらるればなり 8 サウルすなはち民たみをことごとく軍いくさによびあつめてケイラにくだりてダビデと其その從者じふしやを圍󠄃かこまんとす 9 ダビデはサウルのおのれを害󠄅がいせんと謀はかるを知しりて祭司さいしアビヤタルにいひけるはエポデを持もちきたれと〘418㌻〙 10 しかしてダビデいひけるはイスラエルの神かみヱホバよ僕しもべたしかにサウルがケイラにきたりてわがために此この邑まちをほろぼさんと求もとむるを聞きけり 11 ケイラの人々ひと〴〵我われをかれの手てにわたすならんか僕しもべのきけるごとくサウル下くだるならんかイスラエルの神かみヱホバよ請󠄃こふ僕しもべにつげたまへとヱホバいひたまひけるは彼かれ下くだるべしと 12 ダビデいひけるはケイラの人々ひと〴〵われとわが從者じふしやをサウルの手てにわたすならんかヱホバいひたまひけるは彼かれらわたすべし 13 是こゝにおいてダビデと其その六百ぴやく人にんばかりの從者じふしや起󠄃たちてケイラをいで其そのゆきうる所󠄃ところにゆけりダビデのケイラをにげはなれしことサウルに聞きこえければサウルいづることを止やめたり 14 ダビデは曠野あらのにをり要󠄃害󠄅えうがいの地ちにをりまたジフの野のにある山やまに居をるサウル恒つねにかれを尋󠄃たづねたれども神かみかれを其その手てにわたしたまはざりき

15 ダビデ、サウルがおのれの生命いのちを求もとめんために出いでたるを見みる時ときにダビデはジフの野のの叢林もりにをりしが 16 サウルの子こヨナタンたちて叢林もりにいりてダビデにいたり神かみによりて其その力ちからを强つようせしめたり 17 即すなはちヨナタンかれにいひけるに懼おそるるなかれわが父󠄃ちゝサウルの手て汝なんぢにとどくことあらじ汝なんぢはイスラエルの王わうとならん我われは汝なんぢの次󠄄つぎなるべし此事このことはわが父󠄃ちゝサウルもしれりと 18 かくて彼かれら二人ふたりヱホバのまへに契󠄅約けいやくをむすびダビデは叢林もりにとゞまりヨナタンは其その家いへにかへれり
 547㌻ 

19 時ときにジフ人びとギベアにのぼりサウルの許もとにいたりていひけるはダビデは曠野あらのの南みなみにあるハキラの山やまの叢林もりの中うちなる要󠄃害󠄅えうがいに隱かくれて我われらとともにをるにあらずや 20 今いま王わう汝なんぢのくだらんとする望󠄇のぞみのごとく下くだりたまへ我われらはかれを王わうの手てにわたさんと 21 サウルいひけるは汝なんぢら我われをあはれめば願ねがはくは汝等なんぢらヱホバより福祉さいはひをえよ 22 請󠄃こふゆきて尙なほ心こゝろを用もちひ彼かれの踪跡あとある處ところと誰たがかれを見みたるかを見みきはめよ其そは人ひと我われにかれが甚はなはだ機巧かしこく事ことを爲なすを吿つげたれば也なり 23 されば汝なんぢら彼かれが隱かくるる逃󠄄躱處かくれがを皆みなたしかに見みきはめて再ふたゝび我われにきたれ我われ汝なんぢらとともにゆかん彼かれもし其その地ちにあらば我われユダの郡中ぐんちうをあまねく尋󠄃たづねて彼かれを獲えんと

24 かれらたちてサウルに先さきだちてジフにゆけりダビデと其その從者じふしやは曠野あらのの南みなみのアラバにあるマオンの野のにをる 25 斯かくてサウルと其その從者じふしやゆきて彼かれを尋󠄃たづぬ人々ひと〴〵これをダビデに吿つげければダビデ巖いはを下くだりてマオンの野のにをるサウル之これを聞きゝてマオンの野のに至いたりてダビデを追󠄃おふ 26 サウルは山やまの此旁こなたに行ゆきダビデと其その從者じふしやは山やまの彼旁かなたに行ゆくダビデは周󠄃章あはててサウルの前󠄃まへを避󠄃さけんとしサウルと其その從者じふしやはダビデと其その從者じふしやを圍󠄃かこんで之これを取とらへんとす〘419㌻〙 27 時ときに使󠄃者つかひサウルに來きたりて言いひけるはペリシテ人びと國くにををかす急󠄃いそぎきたりたまへと 28 故ゆゑにサウル、ダビデを追󠄃おふことを止やめてかへり往󠄃ゆきてペリシテ人びとにあたるここをもて人々ひと〴〵その處ところをセラマレコテ(逃󠄄のがれ岩いは)となづく 29 ダビデ其處そこよりのぼりてエンゲデの要󠄃害󠄅えうがいにをる

第24章

1 サウル、ペリシテ人びとを追󠄃おふことをやめて還󠄃かへりし時とき人々ひと〴〵かれにつげていひけるは視みよダビデはエンゲデの野のにありと 2 サウル、イスラエルの中うちより選󠄄えらみたる三千ぜんの人ひとを率󠄃ひきゐゆきて野羊やぎの巖いはにダビデと其その從者じふしやを尋󠄃たづぬ 3 途󠄃みちにて羊ひつじの棧をりにいたるに其處そこに洞穴󠄄ほらあなありサウル其その足あしを掩おほはんとていりぬ時ときにダビデと其その從者じふしや洞ほらの隅すみに居ゐたり
 548㌻ 
4 ダビデの從者じふしやこれにいひけるはヱホバが汝なんぢに吿つげて視みよ我われ汝なんぢの敵てきを汝なんぢの手てにわたし汝なんぢをして善よしと見みるところを彼かれになさしめんといひたまひし日ひは今いまなりとダビデすなはち起󠄃たちてひそかにサウルの衣ころもの裾すそをきれり 5 ダビデ、サウルの衣ころもの裾すそをきりしによりて後のち其心そのこころみづから責せむ 6 ダビデ其その從者じふしやにいひけるはヱホバの膏あぶらそそぎし者ものなるわが主しゆにわが此事このことをなすをヱホバ禁きんじたまふかれはヱホバの膏あぶらそそぎし者ものなればかれに敵てきしてわが手てをのぶるは善よからず 7 ダビデ此このことばをもって其その從者じふしやを止とゞめサウルに擊うちかかる事ことを容ゆるさずサウルたちて洞ほらを出いでて其その道󠄃みちにゆく

8 ダビデもまた後あとよりたちて洞ほらをいでサウルのうしろに呼よばはりて我われ主しゆ王わうよといふサウル後うしろをかへりみる時ときダビデ地ちにふして拜はいす 9 ダビデ、サウルにいひけるは汝なんぢなんぞダビデ汝なんぢを害󠄅がいせん事ことを求もとむといふ人ひとの言ことばを聽きくや 10 視みよ今日けふ汝なんぢの目めヱホバの汝なんぢを洞ほらのうちにて今日けふわが手てにわたしたまひしことを見みたり人々ひと〴〵我われに汝なんぢをころさんことを勸󠄂すゝめたれども我われ汝なんぢを惜をしめり我われいひけらくわが主しゆはヱホバの膏あぶらそそぎし者ものなればこれに敵てきしてわが手てをのぶべからずと 11 わが父󠄃ちゝよ視みよわが手てにある汝なんぢの衣ころもの裾すそを見みよわが汝なんぢの衣ころもの裾すそをきりて汝なんぢを殺ころさざるを見みばわが手てには惡あくも罪過󠄃とがもなきことを汝なんぢ見みて知しるべし我われ汝なんぢに罪つみををかせしことなし然しかるに汝なんぢわが生命いのちをとらんとねらふ 12 ヱホバ我われと汝なんぢの間あひだを審さばきたまはんヱホバわがために汝なんぢに報むくいたまふべし然されどわが手ては汝なんぢに加くはへざるべし 13 古いにしへの諺ことわざにいふごとく惡あくは惡人あくにんよりいづされどわが手ては汝なんぢにくはへざるべし〘420㌻〙 14 イスラエルの王わうは誰たれを趕おはんとて出いでたるや汝なんぢたれを追󠄃おふや死しにたる犬いぬをおひ一ひとつの蚤のみをおふなり 15 ねがはくはヱホバ審判󠄄さばき者てとなりて我われと汝なんぢのあひだをさばきかつ見みてわが訟󠄃うつたへを理たゞし我われを汝なんぢの手てよりすくひいだしたまはんことを
 549㌻ 

16 ダビデこれらの言ことばをサウルに語かたりをへしときサウルいひけるはわが子こダビデよ是これは汝なんぢの聲こゑなるかとサウル聲こゑをあげて哭なきぬ 17 しかしてダビデにいひけるは汝なんぢは我われよりも正たゞし我われは汝なんぢに惡あくをむくゆるに汝なんぢは我われに善ぜんをむくゆ 18 汝なんぢ今日けふいかに汝なんぢが我われに善よくなすかを明あきらかにせりヱホバ我われを爾なんぢの手てにわたしたまひしに爾なんぢ我われをころさざりしなり 19 人ひともし其その敵てきにあはばこれを安やすらかに去さらしむべけんや爾なんぢが今日けふ我われになしたる事ことのためにヱホバ爾なんぢに善ぜんをむくいたまふべし 20 視みよ我われ爾なんぢが必かならず王わうとならんことを知しりまたイスラエルの王わう國くにの爾なんぢの手てによりて堅かたくたたんことをしる 21 今いま爾なんぢヱホバをさして我われにわが後あとにてわが子孫しそんを斷たゝずわが名なをわが父󠄃ちゝの家いへに滅めつせざらんことを誓ちかへと 22 ダビデすなはちサウルにちかふ是こゝにおいてサウルは家いへにかへりダビデと其その從者じふしやは要󠄃害󠄅えうがいにのぼれり

第25章

1 爰こゝにサムエル死しにしかばイスラエル人びと皆みなあつまりて之これをかなしみラマにあるその家いへにてこれを葬はうむれりダビデたちてバランの野のにくだる

2 マオンに一箇ひとりの人ひとあり其その所󠄃有󠄃もちものはカルメルにあり其人そのひと甚はなはだ大おほいなる者ものにして三千ぜんの羊ひつじと一千せんの山羊やぎをもちしがカルメルにて羊ひつじの毛けを剪きり居ゐたり 3 其人そのひとの名なはナバルといひ其その妻つまの名なはアビガルといふアビガルは賢かしこく顏かほ美よき婦󠄃をんななりされど其その夫をつとは剛愎かたくなにして其その爲なすところ惡あしかりきかれはカレブの人ひとなり 4 ダビデ野のにありてナバルが其その羊ひつじの毛けを剪きりをるを聞きき 5 ダビデ十じふ人にんの少者わかものを遣󠄃つかはすダビデ其その少者わかものにいひけるはカルメルにのぼりナバルにいたりわが名なをもてかれに安否あんぴをとひ 6 かくのごとくいへ願ねがはくは壽いのちながかれ爾なんぢ平󠄃安やすらかなれ爾なんぢの家いへやすらかなれ爾なんぢが有󠄃もつところの物ものみなやすらかなれ 7 我われ爾なんぢが羊毛ひつじのけを剪きらせをるを聞きけり爾なんぢの牧羊者ひつじかひは我われらとともにありしが我われらこれを害󠄅がいせざりきまたかれらがカルメルにありしあひだかれらの物もの何なにも失うせたることなし 8 爾なんぢの少者わかものに問とへかれら爾なんぢにつげん願ねがはくは少者わかものをして爾なんぢのまへに恩めぐみをえせしめよ我われら吉よき日ひに來きたる請󠄃こふ爾なんぢの手てにあるところの物ものを爾なんぢの僕しもべらおよび爾なんぢの子こダビデにあたへよ〘421㌻〙
 550㌻ 

9 ダビデの少者わかものいたりダビデの名なをもって是これらのことばの如ごとくナバルに語かたりてやめり 10 ナバル、ダビデの僕しもべにこたへていひけるはダビデは誰たれなるヱサイの子こは誰たれなる此この頃ごろは主人しゆじんをすてて遁󠄅逃󠄄のがるる僕しもべおほし 11 我われあにわがパンと水みづおよびわが羊毛ひつじのけをきる者もののために殺ころしたる肉󠄁にくをとりて何處いづくよりか知しれざるところの人々ひと〴〵にあたふべけんや 12 ダビデの少者わかものふりかへりて其その道󠄃みちに就つき歸かへりきたりて此これ等らの言ことばのごとくダビデに吿つぐ 13 是こゝにおいてダビデ其その從者じふしやに爾なんぢらおのおの劍かたなを帶おびよと言いひければ各おの〳〵劍かたなをおぶダビデもまた劍かたなをおぶ而しかして四し百ひやく人にんばかりダビデにしたがひて上のぼり二に百ひやく人にんは輜重にのところに止とゞまれり

14 時ときにひとりの少者わかものナバルの妻つまアビガルに吿つげていひけるは視みよダビデ野のより使󠄃者つかひをおくりて我われらの主人しゆじんを祝しゆくしたるに主人しゆじんかれらを詈ののしれり 15 されどかの人々ひと〴〵はわれらに甚はなはだ善よくなし我われらは害󠄅がいをかうむらず亦またわれら野のにありし時ときかれらとともにをるあひだはなにをも失うしなはざりき 16 我われらが羊ひつじをかひて彼かれらとともにありしあひだ彼かれらは日夜ひるよるわれらの墻かきとなれり 17 されば爾なんぢ今いましりてなにをなさんかを考かんがふべし其そはわれらの主人しゆじんおよび主人しゆじんの全󠄃家ぜんかに定さだめて害󠄅がいきたるべければなり主人しゆじんは邪󠄅魔󠄃よこしまなる者ものにして語かたることをえずと

18 アビガルいそぎパン二に百ひやく酒さけの革嚢かはぶくろ二ふたつ旣󠄁すでに調󠄃ととのへたる羊ひつじ五いつつ烘麥やきむぎ五ごセア乾葡萄ほしぶだう百ひやく球ふさ乾ほし無花果いちじくの團塊かたまり二に百ひやくを取とりて驢馬ろばにのせ 19 其その少者わかものにいひけるは我わが先さきに進󠄃すゝめ視みよ我われ爾なんぢらの後うしろにゆくと然されど其その夫をつとナバルには吿つげざりき 20 アビガル驢馬ろばにのりて山やまの僻處くぼみにくだれる時とき視みよダビデと其その從者じふしやかれにむかひてくだりければかれ其その人々ひと〴〵にあふ
 551㌻ 
21 ダビデかつていひけるは誠󠄃まことにわれ徒いたづらに此人このひとの野のにて有󠄃もてる物ものをみなまもりてその物ものをして何いかもうせざらしめたりかれは惡あくをもてわが善ぜんにむくゆ 22 ねがはくは神かみダビデの敵てきにかくなしまた重かさねてかくなしたまへ明あくる晨あさまでに我われはナバルに屬ぞくする總󠄂すべての物ものの中うちひとりの男をとこをものこさざるべし

23 アビガル、ダビデを視みしとき急󠄃いそぎ驢馬ろばよりおりダビデのまへに地ちに俯ふして拜はいし 24 其その足あしもとにふしていひけるはわが主しゆよ此この咎とがを我われに歸きしたまへ但たゞし婢しもめをして爾なんぢの耳みゝにいふことを得えさしめ婢しもめのことばを聽きゝたまへ 25 ねがはくは我われ主きみこの邪󠄅よこしまなる人ひとナバル(愚おろか)の事ことを意こゝろに介さしはさむなかれ其そはかれは其その名なの如ごとくなればなりかれの名なはナバルにしてかれは愚おろかなりわれなんぢの婢しもめはわが主しゆのつかはせし少わかものを見みざりき〘422㌻〙 26 さればわがしゆよヱホバはいくまたなんぢのたましひはいくヱホバなんぢのきたりて血ちをながしまた爾なんぢがみづから仇あたをむくゆるを阻とどめたまへりねがはくは爾なんぢの敵てきたるものおよびわが主しゆに害󠄅がいをくはへんとする者ものはナバルのごとくなれ 27 さて仕女つかへめがわが主しゆにもちきたりしこの禮物れいもつをねがはくはわが主しゆの足あし迹あとにあゆむ少者わかものにたてまつらしめたまへ 28 請󠄃こふ婢しもめの過󠄃あやまちをゆるしたまへヱホバ必かならずわが主しゆのために堅かたき家いへを立たてたまはん是こはわが主しゆヱホバの軍いくさに戰たゝかふにより又󠄂また世よにいでてよりこのかた爾なんぢの身みに惡あしきこと見みえざるによりてなり 29 人ひとたちて爾なんぢを追󠄃おひ爾なんぢの生命いのちを求もとむれどもわが主しゆの生命いのちは爾なんぢの神かみヱホバとともに生命いのちの包󠄃裏つつみの中うちに包󠄃つゝみあり爾なんぢの敵てきの生命いのちは投石器いしなげのうちより投なげすつる如ごとくヱホバこれをなげすてたまはん 30 ヱホバその爾なんぢにつきて語かたりたまひし諸もろ〳〵の善よき事ことをわが主しゆになして爾なんぢをイスラエルの主宰つかさに命めいじたまはん時ときにいたりて 31 爾なんぢの故ゆゑなくして血ちをながしたることも又󠄂またわが主しゆのみづから其その仇あだをむくいし事ことも爾なんぢの憂うれへとなることなくまたわが主しゆの心こゝろの責せめとなることなかるべし但たゞしヱホバのわが主しゆに善よくなしたまふ時ときにいたらばねがはくは婢しもめを憶おもひたまへ
 552㌻ 

32 ダビデ、アビガルにいふ今日けふ汝なんぢをつかはして我われをむかへしめたまふイスラエルの神かみヱホバは頌󠄃美ほむべきかな 33 また汝なんぢの智慧󠄄ちゑはほむべきかな又󠄂また汝なんぢはほむべきかな汝なんぢ今日けふわがきたりて血ちをながし自みづから仇あだをむくゆるを止とゞめたり 34 わが汝なんぢを害󠄅がいするを阻とどめたまひしイスラエルの神かみヱホバは生いく誠󠄃まことにもし汝なんぢいそぎて我われを來きたり迎󠄃むかへずば必かならず翌󠄃朝󠄃あくるあさまでにナバルの所󠄃ところにひとりの男をとこものこらざりしならんと 35 ダビデ、アビガルの携たづさへきたりし物ものを其その手てより受うけてかれにいひけるは安やすらかに汝なんぢの家いへにかへりのぼれ視みよわれ汝なんぢの言ことばをききいれて汝なんぢの顏かほを立たてたり 36 かくてアビガル、ナバルにいたりて視みるにかれは家いへに酒宴しゆえんを設まうけ居ゐたり王わうの酒宴しゆえんのごとしナバルの心こゝろこれがために樂たのしみて甚はなはだしく醉ゑひたればアビガル多少たせうをいはず何なにをも翌󠄃朝󠄃あくるあさまでかれにつげざりき 37 朝󠄃あさにいたりナバルの酒さけのさめたる時とき妻つまかれに是等これらの事ことをつげたるに彼かれの心こゝろそのうちに死しゝて其その身み石いしのごとくなりぬ 38 十とを日かばかりありてヱホバ、ナバルを擊うちたまひければ死しねり

39 ダビデ、ナバルの死しにたるを聞きゝていひけるはヱホバは頌󠄃美ほむべきかなヱホバわが蒙かうむりたる恥辱はぢの訟󠄃うつたへを理たゞしてナバルにむくい僕しもべを阻とどめて惡あくをおこなはざらしめたまふ其そはヱホバ、ナバルの惡あくを其その首かうべに歸きし賜たまへばなりと爰こゝにダビデ、アビガルを妻つまにめとらんとて人ひとを遣󠄃つかはしてこれとかたらはしむ〘423㌻〙 40 ダビデの僕しもべカルメルにをるアビガルの許もとにいたりてこれにかたりいひけるはダビデ汝なんぢを妻つまにめとらんとて我われらを汝なんぢに遣󠄃つかはすと 41 アビガルたちて地ちにふして拜はいしいひけるは視みよ婢しもめはわが主しゆの僕しもべ等たちの足あしを洗あらふ仕女つかへめなりと 42 アビガルいそぎたちて驢馬ろばに乘のり五ご人にんの侍女こしもととともにダビデの使󠄃者つかひにしたがひゆきてダビデの妻つまとなる
 553㌻ 

43 ダビデまたヱズレルのアヒノアムを娶めとれり彼かれら二人ふたりダビデの妻つまとなる 44 但たゞしサウルはダビデの妻つまなりし其その女むすめミカルをガリムの人ひとなるライシの子こパルテにあたへたり

第26章

1 ジフ人びとギベアにきたりサウルの許もとにいたりてひけるはダビデは曠野あらののまへなるハキラの山やまにかくれをるにあらずやと 2 サウルすなはち起󠄃たちジフの野のにダビデを尋󠄃たづねんとイスラエルの中うちより選󠄄えらみたる三千ぜんの人ひとをしたがへてジフの野のにくだる 3 サウルは曠野あらののまへなるハキラの山やまにおいて路みちのほとりに陣ぢんを取とるダビデは曠野あらのに居をりてサウルのおのれをおふて曠野あらのにきたるをさとりければ 4 ダビデ斥候ものみを出いだしてサウルの誠󠄃まことに來きたりしをしれり 5 ここにおいてダビデたちてサウルの陣ぢんをとれるところにいたりサウルおよび其その軍ぐんの長かしらネルの子こアブネルの寢いねたるところを見みたりすなはちサウルは車くるま營がこひの中うちに寢いぬ民たみ其そのまはりに陣ぢんをはれり

6 ダビデ答こたへてヘテ人びとアヒメレクおよびゼルヤの子こにしてヨアブの兄弟きやうだいなるアビシヤイにいひけるは誰たれか我われとともにサウルの陣ぢんにくだらんかとアビシヤイいふ我われ汝なんぢとともに下くだらん 7 ダビデとアビシヤイすなはち夜よにいりて民たみの所󠄃ところにいたるに視みよサウルは車くるま營がこひのうちに寢ね臥ふし其その槍やり地ちにさして枕まくら邊󠄎もとにありアブネルと民たみは其そのまはりに寢いねたり 8 アビシヤイ、ダビデにいひけるは神かみ今日けふ爾なんぢの敵てきを爾なんぢの手てにわたしたまふ請󠄃こふいま我われに槍やりをもてかれを一度ひとたび地ちにさしとほさしめよ再ふたゝびするにおよばじ 9 ダビデ、アビシヤイにいふ彼かれをころすなかれ誰たれかヱホバの膏あぶらそそぎし者ものに敵てきして其その手てをのべて罪つみなからんや 10 ダビデまたいひけるはヱホバは生いくヱホバかれを擊うちたまはんあるひはその死しぬる日ひ來きたらんあるひは戰たゝかひにくだりて死しにうせん 11 わがヱホバのあぶらそそぎしものに敵てきして手てをのぶることはきはめて善よからずヱホバ禁きんじたまふされどいま請󠄃こふ爾なんぢそのまくらもとの槍やりと水みづの瓶びんをとれしかして我われらさりゆかんと〘424㌻〙
 554㌻ 
12 ダビデ、サウルの枕まくら邊󠄎もとより槍やりと水みづの瓶びんを取とりてかれらさりゆきしが誰たれも見みず誰たれもしらず誰たれも目めを醒さまさざりき其そはかれら皆みな眠ねむり居ゐたればなり即すなはちヱホバかれらをふかく睡ねむらしめたまふ

13 かくてダビデは彼旁かなたにわたりて遙はるかに山やまの頂いたゞきにたてり彼かれと此これとのへだたり大おほいなり 14 ダビデ民たみとネルの子こアブネルによばはりいひけるはアブネルよ爾なんぢこたへざるかアブネルこたへていふ王わうをよぶ爾なんぢはたれなるや 15 ダビデ、アブネルにいひけるは爾なんぢは勇󠄃士をとこならずやイスラエルの中うちにて誰たれか爾なんぢに如しくものあらんしかるに爾なんぢなんぞ爾なんぢの主しゆなる王わうをまもらざるや民たみのひとり爾なんぢの主しゆなる王わうを殺ころさんとていりぬ 16 爾なんぢがなせる此事このことよからずヱホバは生いくなんぢらの罪つみ死しにあたれり爾なんぢらヱホバの膏あぶらそそぎし爾なんぢらの主しゆをまもらざればなり今いま王わうの槍やりと王わうの枕まくら邊󠄎もとにありし水みづの瓶びんはいづくにあるかを見みよ

17 サウル、ダビデの聲こゑをしりていひけるはわが子こダビデよ是これは爾なんぢの聲こゑなるかダビデいひけるは王わうわが主しゆよわが聲こゑなり 18 ダビデまたいひけるはわが主しゆなにゆゑに斯かくその僕しもべをおふや我われなにをなせしや何なんの惡あしき事ことわが手てにあるや 19 王わうわが主しゆよ請󠄃こふいま僕しもべの言ことばを聽ききたまへ若もしヱホバ爾なんぢを我われに敵てきせしめたまふならばねがはくはヱホバ禮物そなへものをうけたまへされど若もし人ひとならばねがはくは其その人々ひと〴〵ヱホバのまへにのろはれよ其そは彼等かれら爾なんぢゆきて他ほかの神かみにつかへよといひて今日こんにち我われを追󠄃おひヱホバの產業さんげふに連󠄃つらなることをえざらしむるが故ゆゑなり 20 ねがはくは我わが血ちをしてヱホバのまへをはなれて地ちにおちしむるなかれそは人ひとの山やまにて鷓鴣しやこをおふがごとくイスラエルの王わう一ひとつの蚤のみをたづねにいでたればなり

21 サウルいひけるは我われ罪つみををかせりわが子こダビデよ歸かへれわが生命いのち今日けふ爾なんぢの目めに寳たからと見みなされたる故ゆゑにより我々われかさねて爾なんぢに害󠄅がいを加くはへざるべし嗚呼あゝわれ愚おろかなることをなして甚はなはだしく過󠄃あやまてり
 555㌻ 
22 ダビデこたへていひけるは王わうよ槍やりを視みよ請󠄃こふひとりの少者わかものをしてわたりてこれを取とらしめよ 23 ねがはくはヱホバおのおのに其その義ぎと眞󠄃實しんじつとにしたがひて報むくいたまへ共ともはヱホバ今日けふ爾なんぢをわが手てにわたしたまひしに我われヱホバの受膏あぶらそそぎし者ものに敵てきしてわが手てをのぶることをせざればなり 24 爾なんぢの生命いのちを今日けふわがおもんぜしごとくねがはくはヱホバわが生命いのちをおもんじて諸もろ〳〵の艱難かんなんのうちより我われをすくひいだしたまへ 25 サウル、ダビデにいひけるはわが子こダビデよ爾なんぢはほむべきかな爾なんぢ大おほいなる事ことを爲なさん亦またかならず勝󠄃かちをえんとしかしてダビデは其その道󠄃みちにさりサウルはおのれの所󠄃ところにかへれり〘425㌻〙

第27章

1 ダビデ心こゝろの中うちにいひけるは是かくのごとくば我われ早晩いつかサウルの手てにほろびん速󠄃すみやかにペリシテ人びとの地ちにのがるるにまさることあらず然しからばサウルかさねて我われをイスラエルの四方よもの境さかひにたづぬることをやめて我われかれの手てをのがれんと 2 ダビデたちておのれとともな六百ぴやく人にんのものとともにわたりてガテの王わうマオクの子こアキシにいたる 3 ダビデと其その從者じふしやガテにてアキシとともに住󠄃すみておのおの其その家族かぞくとともにをるダビデはその二人ふたりの妻つますなはちヱズレル人びとアヒノアムとカルメル人びとナバルの妻つまなりしアビガルとともにあり 4 ダビデのガテににげしことサウルにきこえければサウルかさねてかれをたづねざりき

5 こゝにダビデ、アキシにいひけるは我われもし爾なんぢのまへに恩めぐみを得えたるならばねがはくは郷里ゐなかにある邑まちのうちにて一ひとつのところを我われにあたへて其處そこにすむことを得えさしめよ僕しもべなんぞ爾なんぢとともに王城󠄃みやこにすむべけんやと 6 アキシ其その日ひチクラグをかれにあたへたり是故このゆえにチクラグは今日こんにちにいたるまでユダの王わうに屬ぞくす 7 タビデのペリシテ人びとの國くににをりし日ひ數󠄄かずは一いち年ねんと四箇しか月󠄃げつなりき
 556㌻ 

8 ダビデ其その從者じふしやと共ともにのぼりゲシユル人びとゲゼリ人びとアマレク人びとを襲󠄂おそふたり昔むかしより是等これらはシユルにいたる地ちにすみてエジプトの地ちにまでおよべり 9 ダビデ其その地ちをうちて男をとこをも女をんなをも生いかし存のこさず羊ひつじと牛うしと駱駝らくだと衣服󠄃いふくをとりて還󠄃かへりてアキシに至いたる 10 アキシいひけるは爾なんぢら今日けふ何地いづくを襲󠄂おそひしやダビデいひけるはユダの南みなみとヱラメルの南みなみとケニ人びとの南みなみををかせりと 11 ダビデ男をとこも女をんなも生存いきのこらしめずして一人ひとりをもガテにひきゆかざりき其そはダビデ恐おそらくは彼かれらダビデかくなせりといひて我儕われらの事ことを吿つげんといひたればなりダビデ、ペリシテ人びとの地ちにすめるあひだは其そのなすところ常つねにかくのごとくなりき 12 アキシ、ダビデを信しんじていひけるは彼かれは其その民たみイスラエルをして全󠄃まつたくおのれを惡にくましむされば永ながくわが僕しもべとなるべし

第28章

1 其その頃ころペリシテ人びとイスラエルと戰たゝかはんとて軍いくさのために軍勢ぐんぜいを集あつめたればアキシ、ダビデにいひけるは爾なんぢ明あきらかにこれをしれ爾なんぢと爾なんぢの從者じふしや我われとともに出いでて軍いくさにくははるべし 2 ダビデ、アキシにいひけるはされば爾なんぢ僕しもべのなさんところをしるべしとアキシ、ダビデにさらば我われ爾なんぢを永ながく我わが身みをまもる者ものとなさんといへり〘426㌻〙

3 サムエルすでに死しにたればイスラエルみなこれをかなしみてこれをそのまちラマにはうむれりまたサウルは口寄者くちよせと卜筮師うらなひしを其その地ちよりおひいだせり 4 ペリシテ人びとあつまりきたりてシユネムに陣ぢんをとりければサウル、イスラエルを悉こと〴〵くあつめてギルボアに陣ぢんをとれり 5 サウル、ペリシテ人びとの軍ぐんを見みしときおそれて其心そのこころ大おほいにふるへたり 6 サウル、ヱホバに問とひけるにヱホバ對こたへたまはず夢ゆめに因よりてもウリムによりても預言者よげんしやによりてもこたへたまはず 7 サウル僕しもべ等らにいひけるは口くち寄よせの婦󠄃をんなを求もとめよわれそのところにゆきてこれに尋󠄃たづねんと僕しもべ等らかれにいひけるは視みよエンドルに口くち寄よせの婦󠄃をんなあり
 557㌻ 

8 サウル形かたちを變かへて他ほかの衣服󠄃きものを著き二人ふたりの人ひとをともなひてゆき彼等かれら夜よの間ま`に其その婦󠄃をんなの所󠄃ところにいたるサウルいひけるは請󠄃こふわがために口くち寄よせの術󠄃じゆつをおこなひてわが爾なんぢに言いふ人ひとをわれに呼よびおこせ 9 婦󠄃をんなかれにいひけるはなんぢサウルのなしたる事ことすなはち如何いかにかれが口寄者くちよせと卜筮師うらなひしを國くにより斷たちさりたるを知しる爾なんぢなんぞ我われを死しなしめんとてわが生命いのちを亡ほろぼす謀計はかりごとをなすや 10 サウル、ヱホバを指さしてかれに誓ちかひいひけるはヱホバは生いく此この事ことのためになんぢ罪つみにあふことあらじ 11 婦󠄃をんないひけるは誰たれを我われなんぢに呼よび起󠄃おこすべきかサウルいふサムエルをよびおこせ 12 婦󠄃をんなサムエルを見みて大おほいなる聲こゑにてさけびいだせりしかして婦󠄃をんなサウルにいひけるは爾なんぢなにゆゑに我われを欺あざむきしや爾なんぢはすなはちサウルなり 13 王わうかれにいひけるは恐おそるるなかれ爾なんぢなにを見みしや婦󠄃をんなサウルにいひけるは我われ神かみの地ちよりのぼるを見みたり 14 サウルかれにいひけるは其その形容かたちは如何いかん彼かれいひけるは一人ひとりの老翁󠄄おきないのぼる其人そのひと明衣うはぎを衣きたりサウル其人そのひとのサムエルなるをしりて地ちにふして拜はいせり

15 サムエル、サウルにいひけるは爾なんぢなんぞ我われをよびおこして我われをわづらはすやサウルこたへけるは我われいたく惱なやむペリシテ人びと我われにむかひて軍いくさをおこし又󠄂また神かみ我われをはなれて預言者よげんしやによりても又󠄂また夢ゆめによりてもふたゝび我われにこたへたまはずこのゆゑに我われなすべき事ことを爾なんぢにまなばんとて爾なんぢを呼よべり 16 サムエルいひけるはヱホバ爾なんぢをはなれて爾なんぢの敵てきとなりたまふに爾なんぢなんぞ我われにとふや 17 ヱホバわれをもて語かたりたまひしことをみづから行おこなひてヱホバ國くにを爾なんぢの手てより割󠄅さきはなち爾なんぢの隣人となりびとダビデにあたへたまふ 18 爾なんぢヱホバの言ことばにしたがはず其その烈はげしき怒いかりをアマレクにもらさざりしによりてヱホバ此事このことを今日こんにち爾なんぢになしたまふ〘427㌻〙 19 ヱホバ、イスラエルをも爾なんぢとともにペリシテ人びとの手てにわたしたまふべし明日あす爾なんぢと爾なんぢの子等こら我われとともなるべしまたイスラエルの陣ぢん營えいをもヱホバ、ペリシテ人びとの手てにわたしたまはんと
 558㌻ 

20 サウル直たゞちに地ちに伸のびたふれサムエルの言ことばのために痛いたくおそれ又󠄂また其その力ちからを失うしなへり其そはかれ其その一日いちにち一夜いちや物もの食󠄃くはざりければなり 21 かの婦󠄃をんなサウルにいたり其その痛いたく慄をののくを見みてこれにいひけるは視みよ仕女つかへめ爾なんぢの言ことばをききわが生命いのちをかけて爾なんぢが我われにいひし言ことばにしたがへり 22 されば請󠄃こふ爾なんぢも仕女つかへめの言ことばを聽きゝて我われをして一ひと口くちのパンを爾なんぢのまへにそなへしめよしかして爾なんぢくらひて途󠄃みちに就つく時ときに力ちからを得えよ 23 されどサウル否いなみて我われは食󠄃くらはじといひしを其その僕しもべおよび婦󠄃をんな强しひければ其その言ことばをききいれて地ちより立たちあがり床とこのうへに坐ざせり 24 婦󠄃をんなの家いへに肥こえたる犢こうしありしかば急󠄃いそぎて之これを殺ころしまた粉󠄃こなをとり摶こねて酵たねいれぬパンを炊やき 25 サウルのまへと其その僕しもべ等らのまへに持もちきたりければ彼等かれらくらひて立たちあがり其その夜よのうちにされり

第29章

1 爰こゝにペリシテ人びと其その軍ぐんをことごとくアペクにあつむイスラエルはヱズレルにある泉水いづみの傍かたはらに陣ぢんをとる 2 ペリシテ人びとの君等きみたちあるひは百ひやく人にん或あるひは千せん人にんをひきゐて進󠄃すゝみダビデと其その從者じふしやはアキシとともに其その後うしろにすすむ 3 ペリシテ人びとの諸伯きみたちいひけるは是等これらのヘブル人びとは何なになるやアキシ、ペリシテ人びとの諸伯きみたちにいひけるは此これはイスラエルの王わうサウルの僕しもべダビデにあらずやかれ此この日ひごろ此この年としごろ我われとともにをりしがその逃󠄄にげおちし日ひより今日けふにいたるまで我われかれの身みに咎とがあるを見みずと 4 ペリシテ人びとの諸伯きみたちこれを怒いかる即すなはちペリシテ人びとの諸伯きみたち彼かれにいひけるは此人このひとをかへらしめて爾なんぢが之これをおきし其その所󠄃ところにふたゝびいたらしめよ彼かれは我われらとともに戰たゝかひにくだるべからず然さらば彼かれ戰爭たたかひにおいてわれらの敵てきとならざるべしかれ其その主しゆと和やはらがんとせば何なにをもてすべきやこの人々ひと〴〵の首級くびをもてすべきにあらずや
 559㌻ 
5 是これはかつて人々ひと〴〵が舞踏をどりの中うちにて歌うたひあひサウルは千せんをうちころしダビデは萬まんをうちころすといひたるダビデにあらずや

6 アキシ、ダビデをよびてこれにいひけるはヱホバは生いくまことになんぢは正たゞし爾なんぢの我われとともに陣ぢん營えいに出で入いりするはわが目めには善よしと見みゆ其そは爾なんぢが我われに來きたりし日ひより今日けふにいたるまで我われ爾なんぢの身みに惡あしき事ことあるを見みざればなり然されど諸伯きみたちの目めには爾なんぢよからず 7 されば今いまかへりて安やすらかにゆきペリシテ人びとの諸伯きみたちの目めに惡あしく見みゆることをなすなかれ〘428㌻〙 8 ダビデ、アキシにいひけるは我われ何なにをなせしやわが爾なんぢのまへに出いでし日ひより今日けふまでに爾なんぢ何なにを僕しもべの身みに見みたればか我われゆきてわが主しゆなるわうの敵てきとたたかふことをえざると 9 アキシこたへてダビデにいひけるは我われ爾なんぢのわが目めには神かみの使󠄃つかひのごとく善よきをしるされどペリシテ人びとの諸伯きみたちかれは我われらとともに戰たゝかひにのぼるべからずといへり 10 されば爾なんぢおよび爾なんぢの主しゆの僕しもべの爾なんぢとともにきたれる者もの明あくる朝󠄃あさ夙はやく起󠄃おきよ爾なんぢら朝󠄃あさはやくおきて夜よのあくるに及およばばさるべし 11 是これをもてダビデと其その從者じふしやペリシテ人びとの地ちにかへらんと朝󠄃あさはやく起󠄃おきてされりしかしてペリシテ人びとはヱズレルにのぼれり

第30章

1 ダビデと其その從者じふしや第三日みつかめにチクラグにいたるにアマレク人びとすでに南みなみの地ちとチクラグを侵󠄃をかしたりかれらチクラグを擊うち火ひをもて之これを燬やき 2 其その中うちに居をりし婦󠄃女をんなを擄とりこにし老おいたるをも若わかきをも一人ひとりも殺ころさずして之これをひきて其その途󠄃みちにおもむけり 3 ダビデと其その從者じふしや邑まちにいたりて視みるに邑まちは火ひに燬やけその妻つまと男子むすこ女子むすめは擄とりこにせられたり 4 ダビデおよびこれとともにある民たみ聲こゑをあげて哭なき終󠄃つひに哭なく力ちからもなきにいたれり 5 ダビデのふたりの妻つますなはちヱズレル人びとアヒノアムとカルメル人びとナバルの妻つまなりしアビガルも虜とりこにせられたり 6 時ときにダビデ大おほいに心こゝろを苦くるしめたり其そは民たみおのおの其その男子むすこ女子むすめのために氣きをいらだてダビデを石いしにて擊うたんといひたればなりされどダビデ其その神かみヱホバによりておのれをはげませり
 560㌻ 

7 ダビデ、アヒメレクの子こ祭司さいしアビヤタルにいひけるは請󠄃こふエポデを我われにもちきたれとアビヤタル、エポデをダビデにもちきたる 8 ダビデ、ヱホバに問とふていひけるは我われ此この軍ぐんの後あとを追󠄃おふべきや我われこれに追󠄃おひつくことをえんかとヱホバかれにこたへたまはく追󠄃おふべし爾なんぢかならず追󠄃おひつきてたしかに取とりもどすことをえん 9 ダビデおよびこれとともなる六百ぴやく人にんの者ものゆきてベソル川がはにいたれり後あとにのこれる者ものはここにとゞまる 10 即すなはちダビデ四百ひやく人にんをひきゐて追󠄃おひゆきしが憊󠄂つかれてベソル川がはをわたることあたはざる者もの二百ひやく人にんはとゞまれり

11 衆人ひと〴〵野のにて一人ひとりのエジプト人びとを見みこれをダビデにひききたりてこれに食󠄃物くひものをあたへければ食󠄃くらへりまたこれに水みづをのませたり 12 すなはち一段ひときれの乾ほし無花果いちじくと二ふた球ふさの乾葡萄ほしぶだうをこれにあたへたり彼かれくらひて其その氣きふたゝび爽さはやかになれりかれは三日三夜みつかみよ物ものをもくはず水みづをものまざりしなり〘429㌻〙 13 ダビデかれにいひけるは爾なんぢは誰たれの人ひとなる爾なんぢはいづくの者ものなるやかれいひけるは我われはエジプトの少者わかものにて一人ひとりのアマレク人びとの僕しもべなり三日みつかまへに我われ疾やまひにかかりしゆゑにわが主人あるじ我われをすてたり 14 我われらケレテ人びとの南みなみとユダの地ちとカレブの南みなみををかしまた火ひをもてチクラグをやけり 15 ダビデかれにいひけるは爾なんぢ我われを此この軍ぐんにみちびきくだるやかれいひけるは爾なんぢ我われをころさずまた我われをわが主人しゆじんの手てにわたさざるを神かみをさして我われに誓ちかへ我われ爾なんぢを此この軍ぐんにみちびきくだらん

16 かれダビデをみちびきくだりしが視みよ彼等かれらはペリシテ人びとの地ちとユダの地ちより奪うばひたる諸もろ〳〵の大おほいなる掠取物ぶんどりもののためによろこびて飮のみ食󠄃くひし踴をどりつつ地ちにあまねく散ちりひろがりて居をる 17 ダビデ暮くれあひより次󠄄つぐ日ひの晩よひにいたるまでかれらを擊うちしかば駱駝らくだにのりて逃󠄄にげたる四百ひやく人にんの少者わかきものの外ほかは一人ひとりものがれたるもの无なかりき
 561㌻ 
18 ダビデはすべてアマレク人びとの奪うばひたる物ものを取とりもどせり其その二人ふたりの妻つまもダビデとりもどせり 19 小ちひさきも大おほいなるも男子むすこも女子むすめも掠取物ぶんどりものもすべてアマレク人びとの奪うばひさりし物ものは一ひとつも失うしなはずダビデことごとく取とりかへせり 20 ダビデまた凡すべての羊ひつじと牛うしをとれり人々ひと〴〵この家畜かちくをそのまへに驅おひきたり是これはダビデの掠取物ぶんどりものなりといへり

21 かくてダビデかの憊󠄂つかれてダビデにしたがひ得えずしてベソル川がはのほとりに止とゞまりし二百ひやく人にんの者もののところにいたるに彼かれらダビデをいでむかへまたダビデとともなる民たみをいでむかふダビデかの民たみにちかづきてその安否あんぴをたづぬ 22 ダビデとともにゆきし人々ひと〴〵の中うちの惡あしく邪󠄅よこしまなる者ものみなこたへていひけるは彼等かれらは我われらとともにゆかざりければ我われらこれに取とりもどしたる掠取物ぶんどりものをわけあたふべからず唯たゞおのおのにその妻つま子こをあたへてこれをみちびきさらしめん 23 ダビデ言いひけるはわが兄弟きやうだいよヱホバ我われらをまもり我われらにせめきたりし軍ぐんを我われらの手てにわたしたまひたれば爾なんぢらヱホバのわれらにたまひし物ものをしかするは宜よろしからず 24 誰たれか爾なんぢらにかかることをゆるさんや戰たゝかひにくだりし者ものの取とる分󠄃ぶんのごとく輜重にのかたはらに止とゞまりし者ものの取とる分󠄃ぶんもまた然しかあるべし共ともにひとしく取とるべし 25 この日ひよりのちダビデこれをイスラエルの法おきてとなし例のりとなせり其その事こと今日こんにちにいたる

26 ダビデ、チクラグにいたりて其その掠取ぶんどり物ものをユダの長老としよりなる其その朋友ともだちにわかちおくりて曰いはしめけるは是これはヱホバの敵てきよりとりて爾なんぢらにおくる饋物おくりものなり 27 ベテルにをるもの南みなみのラモテにをるものヤツテルにをる者もの〘430㌻〙 28 アロエルにをる者ものシフモテにをるものエシテモにをるもの 29 ラカルにをるものヱラメル人びとの邑まちにをるものケニ人びとの邑まちにをるもの 30 ホルマにをるものコラシヤンにをるものアタクにをるもの 31 ヘブロンにをるものおよびすべてダビデが其その從者じふしやとともに每つねにゆきし所󠄃ところにこれをわかちおくれり
 562㌻ 

第31章

1 ペリシテ人びとイスラエルと戰たゝかふイスラエルの人々ひと〴〵ペリシテ人びとのまへより逃󠄄にげ負󠄅傷者ておひギルボア山やまに斃たふれたり 2 ペリシテ人びとサウルと其その子等こらに攻せめよりペリシテ人びとサウルの子こヨナタン、アビナダブおよびマルキシユアを殺ころしたり 3 戰たたかひはげしくサウルにせまりて射󠄂手いての者ものサウルを射󠄂いとめければ彼かれ痛いたく射󠄂手いての者もののために苦くるしめり 4 サウル武器ぶきを執とる者ものにいひけるは爾なんぢの劍かたなを拔ぬき其それをもて我われを刺さしとほせ恐おそらくは是等これらの割󠄅禮かつれいなき者ものきたりて我われを刺さし我われをはづかしめんと然しかれども武器ぶきをとるもの痛いたくおそれて肯がへんぜざればサウル劍かたなをとりて其その上うへに伏ふししたり 5 武器ぶきを執とるものサウルの死しにたるを見みておのれも劍かたなの上うへにふしてかれとともに死しねり 6 かくサウルと其その三さん人にんの子こおよびサウルの武器ぶきをとるもの並ならびに其その從者じふしやみな此この日ひ俱ともに死しねり

7 イスラエルの人々ひと〴〵の谷たにの對向むかひにをるもの及およびヨルダンの對面むかひにをるものイスラエルの人々ひと〴〵の逃󠄄にぐるを見みサウルと其その子等こらの死しぬるをみて諸邑まち〳〵を棄すてて逃󠄄にげければペリシテ人びときたりて其その中うちにをる 8 明日あくるひペリシテ人びと戰沒うちじにせる者ものを剝はがんとてきたりサウルと其その三さん人にんの子このギルボア山やまにたふれをるを見みたり 9 彼等かれらすなはちサウルの首くびを斬きり其その鎧甲よろひをはぎとりペリシテ人びとの地ちの四方しはうにつかはして此この好よき報たよりを其その偶像󠄃ぐうざうの家いへおよび民たみの中うちにつげしむ 10 またかれら其その鎧甲よろひをアシタロテの家いへにおき其その體からだをベテシヤンの城󠄃垣いしがきに釘うちつけたり 11 ヤベシギレアデの人々ひと〴〵ペリシテ人びとのサウルになしたる事ことを聞ききしかば 12 勇󠄃士ゆうしみなおこり終󠄃夜よもすがらゆきてサウルの體からだと其その子等こどもの體からだをベテシヤンの城󠄃垣いしがきよりとりおろしヤベシにいたりて之これを其處そこに焚やき 13 其その骨ほねをとりてヤベシの柳やなぎの樹きの下もとにはうむり七日なぬかのあひだ斷食󠄃だんじきせり〘431㌻〙
 563㌻